[PC1-2] 比較的長期挿管患者における抜管には過度の予防は必要ない
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一般に長期の気管挿管の抜管時には生体浮腫の生じる可能性があることが知られている.Wittekampらは過去16編の報告を網羅して2480例中254例(約10%)に喉頭浮腫が生じたとしている.これからも分かるように喉頭浮腫の発生は珍しいものではない.このreviewに集められた文献における喉頭浮腫の定義は(1) stridorの聴取,(2) 治療を要するような喘鳴の発生,(3) 嗄声の発生,(4) 再挿管を要したもの,(5) 気管支鏡での気道のほぼ完全閉塞,と様々であり,軽症のものから重症のものまで幅広い病態を含んでいる.現実に問題となるのは気道閉塞してしまっているような最重症の喉頭浮腫の場合である.このようなケースの頻度はどれほどかということは残念ながら文献にも示されていないが,集中治療や救急に常時携わる医師でも抜管の際にこのような最重症の喉頭浮腫に遭遇した経験のある医師はわずかだと思われる.筆者の周囲でもそのような事例は1つもない.これらの事からすれば抜管直後に本件のような急激な気道閉塞を予見することはできなかったと言える.
現在のところ喉頭浮腫を予測する方法として気管チューブのカフを脱気してリークが生じるかどうかを確かめるcuff leak test(CLT)が良いとする報告があるが,現時点ではエビデンスレベルは低い.Schnellらは偽陽性率が高すぎることからルーチンにCLTを行うと不必要な長期挿管を招くと結論づけている.また,喉頭浮腫を軽減させる方法としてステロイド剤の全身投与が行われているが,2016年のATSのガイドラインでもCLTでリークが認められなかったが他の抜管条件が整っている場合には抜管の4時間以上前にステロイド剤の全身投与を行うことを中等度のエビデンスとして推奨している程度である.また,抜管前に内視鏡で喉頭付近の観察を行うことに関しても,観察できる視野は限られておりそれを元に的確な判断を行うことは難しいと考えられる.
さて,抜管後に気道確保までに20分を要したことに対してそれよりも早く気道確保できなかったのか,という問いであるが喉頭浮腫の病態を知っている医師であればすぐに再挿管できたと考えている.重症の喉頭浮腫では声帯の両脇にある仮声帯に浮腫が生じ声帯を隠してしまうため,この光景を知っていなければ喉頭展開できていても声門の位置が認識できず挿管できない.しかし気管チューブが通らなくなるような物理的な狭窄が生じるわけではないので正しく声門の方向にチューブを進められればチューブは気管内に入る.気管挿管できかった時には輪状甲状靭帯切開が最も早く気道確保できたと考えられるが,誰でもすぐにできる手技ではない.これができないことが一般的な医療水準以下であるというべきものではない.
一般的な抜管では再挿管の準備をしておくだけで十分である.
現在のところ喉頭浮腫を予測する方法として気管チューブのカフを脱気してリークが生じるかどうかを確かめるcuff leak test(CLT)が良いとする報告があるが,現時点ではエビデンスレベルは低い.Schnellらは偽陽性率が高すぎることからルーチンにCLTを行うと不必要な長期挿管を招くと結論づけている.また,喉頭浮腫を軽減させる方法としてステロイド剤の全身投与が行われているが,2016年のATSのガイドラインでもCLTでリークが認められなかったが他の抜管条件が整っている場合には抜管の4時間以上前にステロイド剤の全身投与を行うことを中等度のエビデンスとして推奨している程度である.また,抜管前に内視鏡で喉頭付近の観察を行うことに関しても,観察できる視野は限られておりそれを元に的確な判断を行うことは難しいと考えられる.
さて,抜管後に気道確保までに20分を要したことに対してそれよりも早く気道確保できなかったのか,という問いであるが喉頭浮腫の病態を知っている医師であればすぐに再挿管できたと考えている.重症の喉頭浮腫では声帯の両脇にある仮声帯に浮腫が生じ声帯を隠してしまうため,この光景を知っていなければ喉頭展開できていても声門の位置が認識できず挿管できない.しかし気管チューブが通らなくなるような物理的な狭窄が生じるわけではないので正しく声門の方向にチューブを進められればチューブは気管内に入る.気管挿管できかった時には輪状甲状靭帯切開が最も早く気道確保できたと考えられるが,誰でもすぐにできる手技ではない.これができないことが一般的な医療水準以下であるというべきものではない.
一般的な抜管では再挿管の準備をしておくだけで十分である.