第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY12] シンポジウム12
周術期における集中治療

2019年3月2日(土) 16:05 〜 17:35 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:瀬尾 勝弘(小倉記念病院 救急部(麻酔科・集中治療部)), 森松 博史(岡山大学病院麻酔科蘇生科)

[SY12-1] 術前からFontan循環を有する患者の術後集中治療

中森 裕毅, 米倉 寛, 亀井 政孝 (三重大学医学部附属病院 臨床麻酔部)

ライブ配信】

近年の集中治療医学、小児循環器学、心臓外科学の進歩により、先天性心疾患の死亡率は低下し、既に先天性心疾患と診断されている患者の過半数は小児ではなく成人である。先天性心疾患の機能的修復術の最終形態としてFontan循環があるが、その管理は二心室の患者とは大きく異なる面がある。

【呼吸管理】
肺は拘束性障害を呈する。Fontan循環成立のためには肺血管抵抗を低く保つことが望ましく、挿管状態でICU入室となった場合も、必要最低限の鎮静の下multimodal analgesiaを駆使し、速やかな抜管を目指す。一方で、陽圧換気を継続する場合には、ARDSにおいて常識とされる十分なPEEPによるopen lung strategyは肺血管抵抗上昇を招くおそれがあり注意を要する。人工呼吸器は平均気道内圧が最低となるような設定をする。
Fenestrationや肺内シャントがあり、目標SpO2は低値を許容するが、肺血管抵抗降下作用を期待し酸素投与を行う場合もある。一酸化窒素吸入も選択肢である。

【輸液・循環管理】
体心室は拡張障害を有する一方で、肺循環を担う心室がないため、CVPを保つ必要がある。そのため、陽圧換気からの早期離脱のためにはドライサイドを目指したいものの、輸液量が増加する傾向にある。単心室であるのでPassive Leg Raising testといった輸液反応性試験や動的血行動態モニタリングの解釈には注意が必要である。
複数回の心臓手術により交感神経系がdenervationされており脈拍数の変化に乏しい点にも留意する。


従来は、Fontan循環患者の非心臓手術は予定帝王切開が多く、症例は一部の施設に集約されてきた。しかし、今後その生殖年齢の世代の加齢に伴い、悪性腫瘍の大手術後の集中治療室入室の急増が予想される。
Fontan循環の集中治療管理は、この特徴的な循環生理に習熟したうえで、一般的な集中治療管理の知見を適応できるのか判断する必要があり、Plastic bronchitis、蛋白漏出性胃腸症、Fontan-associated liver diseaseといったICU管理を難渋させる重要臓器の遠隔期合併症の理解とあわせ、まさに集中治療医の総合力が問われることとなる。