14:50 〜 15:00
[48] 深層学習を用いたカメラ映像の画像認識により患者の重症度評価をするAI の研究開発
超高齢化社会により重症患者が増加する中,集中治療室(ICU)における医療従事者不足が恒常化している.ICUでは多臓器に障害を持つ患者の病状を,複合的な情報を用いて,適時適切な医療介入をおこなう必要があるが,多臓器障害を見定める集中治療専門医数は不足している.こうした状況下で,各患者の重症度をベッドサイドで頻回に評価し続け,優先度の高い患者をトリアージしていくことは困難な状況にある.重症度評価を簡素化する目的で,早期警告スコアをはじめとする重症度スコアリングツールが急性期医療現場では普及しつつあるが,意識状態の判定をはじめ,一部機械化されていないパラメータを含むケースが多く,完全な自動化へ向けては課題がある.そこで当院の研究グループでは,横浜市立大学発ベンチャー・㈱ CROSS SYNCと共同で,患者モニタリングカメラより抽出した画像情報に対してコンピュータビジョンを用いて,意識状態や鎮静深度を判定するシステムを研究開発している.具体的には,深層学習ベースの物体検出モデルを用いて,画像データから顔や目の情報を検出し,その状態や検出頻度といった測定量をもとに,Glasgow Coma ScaleもしくはRichmond Agitation-Sedation Scale に従った形での患者の意識状態を疑似的に判定する仕組みである.本演題では,深層学習ベースの物体検出モデルによる患者表情認識から得られた所見をもとに,患者の意識レベルに応じた表情に関する特徴,また,意識状態に関して異なる評価を受けた各患者群の特徴量の差分についてのケース・コントロールスタディの結果を報告する.さらに,コンピュータビジョンを入院病棟環境で用いる場合に特有の課題,懸念点,制約について報告を行う他,社会実装,普及へ向けた今後の展望についても紹介する.本演題の内容は, AMEDの課題番号 JP22uk1024008の支援を受ける内容を含む.