第99回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

医工連携

医工連携

2024年6月21日(金) 15:30 〜 16:20 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:堀 純也(岡山理科大学)

15:30 〜 15:40

[58] 産学官の医工連携により開発した改良型の真空成形型式副木

櫻井 和徳1,2, 吉沢 彰洋3, 小川 宏4 (1.公益財団法人長野県産業振興機構, 2.信州大学学術研究・産学官連携推進機構, 3.北アルプス広域消防本部(長野県), 4.ファミリー・サービス・エイコー㈱)

救急活動において上肢下肢の骨折に対する応急処置は,これまでシーネが一般的に用いられていた.しかし,固定時に包帯を巻く際に傷病者の骨折部位を何度も動かす必要があり,激しい疼痛を伴っていた.骨折部位を極力動かさずに処置可能な機器としては海外製の真空成形型式副木があるが,日本人には大き過ぎる,素材が厚く上肢または下肢に巻く際に作業性が悪い,内包されている樹脂ビーズが片寄り易く矯正してから使用するために処置時間が長くなる,収納サイズが大きく救急車内での占有体積が大きいといった課題があり,救急車に搭載されていても使われないケースがあった.
本開発の真空成形型式副木は前記課題を解決したもので,さらに専用サイズの滅菌ガーゼを取り付け可能としたので外傷を伴う場合も被覆処置を同時におこなえる副木を提供することができた.
本開発のきっかけは,企業の様々な支援をおこなっている公益財団法人長野県産業振興機構が企業向けに主催した消防署における救急シミュレーション訓練の見学会であった.その際に前記海外製副木の課題解決ニーズが救急救命士から示され,同機構の医工連携コーディネータがそのニーズを解決可能な企業とマッチングをおこない開発がスタートした.
開発の過程では企業担当者と救急救命士,医工連携コーディネータが月に一度程度のペースで綿密な打ち合わせをおこない商品コンセプト,仕様,機構設計,試作をおこなった.試作品は現場を良く知る救急救命士がサイズ感や使用感(迅速性や作業性等),収納性等の評価をおこなうとともに,救命救急の専門家にご指導をいただき仕様に反映することで製品が完成した.
さらに,特許や商標などの知的財産の出願や,薬事,救急専門の商社を巻き込んだ拡販についても企業担当者と救急救命士,医工連携コーディネータが一緒に検討し推進することで産学官の医工連携による真空成形型式副木の商品化を1年程度の短期間でおこなうことができた.