15:50 〜 16:00
[60] エアー搬送を用いた自動点眼装置における点眼確率の向上
緑内障患者の点眼手技についての調査では,被験者の37%が眼の表面や周辺に容器が接触してしまい,問題なく点眼できたのはわずか 20%であった1).被験者の多くが高齢であることを考慮する必要はあるが,点眼を苦手とする人は多い.この問題を解決するため,我々は顔を前に向けた状態で自動的に点眼をおこなう装置の開発を進めてきた.以前に開発した装置では,上下瞼を押さえた場合99%の高い点眼確率が得られたが,瞼を押さえない場合では77%に留まっていた2).本研究では瞼を押さえなくても高い点眼確率を得ることを目的として改善をおこなった.新しい自動点眼装置では,点眼薬容器の出口から送風口までの距離(Y方向)と眼までの距離(Z方向)を短くした.点眼薬の液滴の平均重さは46.6mg,標準偏差σは2.2mgであった.液滴の重さに±3σ(99.7%)のばらつきがあるとし,横方向からの風を受けた軌道の計算をしたところ,眼の位置で垂直方向のばらつきはΔY±3σ=2.06 mmになった.このばらつきは先に作製した装置のおよそ半分である.また,この装置では眼からおよそ45°斜め上にLEDの固視灯を取り付けた.瞼の押さえ方の違い,固視灯使用の有無などの条件を変えて,右と左眼で各50回試行し点眼確率を求めた.上下の瞼を押さえたときは平均100%,瞼を押さえない場合は81%になった.いずれの瞼の押さえ方でも向上したが,これはばらつきΔ Y±3σが減少した効果である.さらに固視灯を見る方法では,視線が上向きになることで瞼が開かれ,瞼を押さえなくても100%を得ることができた.
文献
1)X. Gao et al., Journal of Ophthalmology, vol. 2018, Article ID 1376020, 7 pages(2018).
2)中野康太他,第98回日本医療機器学会大
会(2023).
文献
1)X. Gao et al., Journal of Ophthalmology, vol. 2018, Article ID 1376020, 7 pages(2018).
2)中野康太他,第98回日本医療機器学会大
会(2023).