[O-2-251] 大脳静脈血酸素飽和度揺らぎの精密測定 ―細動脈機能情報の取得―
【目的】大脳の細動脈機能の劣化は認知症の早期に現れるので、細動脈機能情報の取得が期待されている。また、細動脈は呼吸に連動した動脈血二酸化炭素分圧変動により収縮拡張し、それに伴い静脈血酸素飽和度が呼吸周期で揺らぐ。その揺らぎはMRIにより測定可能であるが、測定する静脈洞部位により精度が大きく異なる。そこで、本研究では測定精度が高い静脈洞部位を同定する方法を確立し、大脳静脈血酸素飽和度揺らぎを精密に求め細動脈機能情報の高精度な取得を目指した。【方法】5名の健常ボランティアを対象に、1.5-T MRIにて SE-EPI法(TR = 250 ms)を用いて、上矢状静脈洞の異なる3箇所それぞれの位置で血流に直交するシングルスライス(7‐15 mm厚)の連続撮像を行い、それぞれの位置での平均信号強度とスライス厚の線形性を調べた。次に、脈波同期Phase Contrast法で上矢状静脈洞の血流速を求め、平均信号強度とスライス厚の線形性との関係を調べた。また、線形性が高い部位の時系列データをフーリエ変換し呼吸周期(0.2‐0.5 Hz)のPower Spectral Intensity(PSI)を算出し、平均信号強度とPSIの散布図の近似直線の傾きから呼吸周期の静脈血酸素飽和度揺らぎの大きさを算出した。【結果と考察】静脈洞の血流速が低く、かつ、流れに沿った血流速変化が小さいほど平均信号強度がスライス厚に比例した。したがって、そのような部位で連続撮像を行うことで血液酸素飽和度揺らぎ測定精度が向上する。また、得られた平均信号強度と呼吸成分のPSIの関係は有意(p<0.05)な正の相関を示し、その関係より静脈血酸素飽和度揺らぎが呼吸周期で8%揺らいでいることが判明した。【結論】大脳静脈血酸素飽和度揺らぎを高精度で求める方法を確立し、呼吸周期で大脳静脈血酸素飽和度が8%揺らいでいることを初めて明らかにした。