第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

講演情報

一般演題

ポスター発表

[P5] 小児

[P5-02] 他者との相互関係の構築により生活場面での行為に変化がみられた症例への関わり

*余語 風香1、木村 正剛1 (1. 北海道こども発達研究センター)

他者との相互関係の構築により生活場面での行為に変化がみられた症例への関わり 〇余語風香1),木村正剛1)
1) 北海道こども発達研究センター

【はじめに】
 言葉の遅れを主訴とした症例に対し,非言語的なやり取りとそれに伴う音声入力により言語理解が促され,生活場面での行動変化が得られたため報告する.

【症例紹介】
 2歳1ヵ月女児.言葉の遅れを主訴とし来所された.遠城寺式乳幼児分析的発達検査結果は,移動:1歳5か月,手の運動:1歳1か月,基本的習慣・対人関係:11か月,発語:6か月,理解:10か月であり発達の遅れが認められた.課題へは5分程度の注意の持続は可能であったが,視覚情報への注意の転導が多くみられた.2語文は理解されている様子はあるも従命には至らず,動作を手伝う等の直接的な促しが必要であった.道具のやり取りは成立せず抱え込む様子があった.コミュニケーションはセラピストの働きかけに呼応する場面が少なく,本児からの働きかけもなく周囲を俯瞰している様子や反応の遅さが認められた.

【病態解釈】
 検査結果から発達年齢は1才前後であり,言語獲得に必要な他者との共同注視等の獲得に未熟さがみられその結果,言語獲得に遅れがあると推察した.また,自身の行為に対し他者の反応を参照する機会の乏しさから,反応の遅延や消失がみられていると考えた.これらのことから言語の学習に必要な相互作用の枠組みが不十分であると仮定し,相互的なやり取りを成立させる学習を提供することで言語獲得を促すに至ると考えた.

【治療介入と結果】
 5週間計24回の介入で,物品の受け渡し課題と,表情分析課題を実施した.遠城寺式乳幼児分析的発達検査の再評価結果は運動面に変化はないものの対人関係・発語面において約半年の発達が促された.また,相手へ能動的に注意を向ける場面が増え,他者からの働きかけを受けての物品選択や,受け渡し,発声の頻度が増加した.その後,更に4週間計12回の介入で,3語文の解読訓練を実施し,2~6択からの選択が可能となった.

【考察】
 本症例では,課題を通し他者へ注意を向けることや,やり取りについて学習をしたことで他者の言動へ注意を向け相互的なやり取りが成立し,解読課題を通し言葉の理解を促すに至り,生活場面や声掛けに対する反応や行為の改善がみられたと考えた.

【倫理的配慮,説明と同意】
 保護者にプライバシー保護について説明し同意を得た.