第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

講演情報

一般演題

ポスター発表

[P5] 小児

[P5-04] 「遊びが広がらない」超低出生体重児に対する視覚課題を通した関りの効果

*伊東 奈津子1、大平 雅弘2 (1. Caraこども発達サポート、2. 植草学園大学 )

【はじめに】
 新規情報に対する関心が低く,狭小化した遊びの幅の拡大を目的にOT介入となった3歳児に対して,視覚情報の複雑さを調整し,見比べて異同を選択する遊びを提示した結果を報告する.

【症例】
 超低出生体重児(30週522g)で生まれた3歳6ヶ月双子の弟.発達は全般に重度域の遅れを認め,定頸は1歳0カ月,寝返りは1歳2カ月,座位は1歳6カ月,始歩は3歳5カ月であった.3歳5カ月から児童発達支援センターの利用を開始した.

【評価・解釈】
 介入当初の新版K式発達検査は,姿勢・運動領域の発達年齢は1歳3ヶ月,認知・適応領域は1歳2ヶ月,言語・社会領域は11ヶ月レベルに相当した.全身を使った遊びや,くるくるチャイム,カップタワーを好んだが,手足の過敏性があり物品の把持時間は短く,動作全般に性急さが見られた.
 言語は状況と合わせた理解であり,有意語の表出・発声はなかった.視覚情報を用いて予測比較照合の学習基盤を構築を促せるのではないかと考えた.

【治療アプローチおよび経過】
 1回/月,40分/回の頻度で1年間介入した.課題①~④の順に実施した.①型はめBOX,②ままごと野菜(分割できる野菜のおもちゃで,同じ野菜を選択して接着する),③カラーペグ(穴のある場所を視覚探索する),④人形と絵のマッチングする.課題のガイドは児の手を直接持ち,対象物に注意を促し,異同の理解を促した.視覚情報は3次元から2次元に移行した.
 1年後の新版K式発達検査では姿勢・運動領域は1歳8ヶ月,認知・適応領域では1歳9ヶ月,言語・社会領域は11ヶ月レベルとなった.言語面の点数に変化はなかったが,日常場面で理解できる言葉かけに広がりが見られた.訓練場面では新規情報への注視時間が延長し,見比べる頻度,選択正答性が向上した.自宅では兄弟児で型はめで遊ぶようになり,療育場面では絵本を見たり,支度時に箱の絵と同じ道具を入れることが可能となった.

【考察】
 発達を物理的世界の諸変数と徐々に複雑な相互作用を構築していく能力の獲得であると考えると,視覚情報の難易度を変更し視覚情報の分析を促すことにより,新規玩具に対しての関心の幅が広がってきたのではないかと考える.また,訓練以外でも療育者が注視を促す機会を持てたことは日常生活での変化にも寄与したと考える.

【倫理的配慮(説明と同意)】
 保護者に研究の趣旨と内容について説明し書面にて同意を得た.