[CSP15-3] 筋エコーはこう使う!-静的評価と動的評価-
近年、超音波診断装置の進歩により、様々な神経筋疾患における超音波検査の有用性が明らかになってきた。超音波検査の大きな利点は、非侵襲的検査であること、コストが安く臨床の場面で手軽に繰り返し実施できること、動的評価が可能であることである。本講演では、神経筋疾患における筋超音波検査の有用性と可能性に焦点を当てる。筋を評価する方法としては、針筋電図、MRIやCTによる画像検査、および筋生検が主流である。しかし、針筋電図や筋生検は侵襲的で疼痛を伴い、検査や診断に技術が必要である。CT検査は被爆の問題があり、MRI検査はコスト面の問題において、実臨床で気軽に繰り返し実施することが難しい。一方、超音波検査は侵襲、安全性、コスト面において優れており、CTやMRIなどの画像検査よりも解像度がよい。また、動的評価が可能であることは、他のモダリティにはない大きな特徴である。超音波検査における筋の評価方法は大きく分けると、静止画による評価、動画による評価の2つに分かれる。静止画においては、筋のボリューム、形態、輝度を評価できる。具体的には、様々な疾患における筋萎縮の評価、サルコイド結節など筋内病変の描出、神経筋疾患における筋輝度の変化やそのパターンによる評価が可能である。動的評価においては、筋が収縮した際の動き、および筋の不随意運動の評価が可能である。特に後者については、筋萎縮性側索硬化症におけるfasciculationの検出において非常に有用であることが知られてきている。おなじくfasciculation potentialsを評価できる針筋電図と比較し侵襲が少なく、ベッドサイドで繰り返し実施できる利点がある。 その他、肝臓や乳腺の評価で使用されているエラストグラフィ(Ultra Sound Elastography:超音波組織弾性映像法)を利用した筋の弾性の評価や筋における微小循環の評価など、超音波技術を利用した筋の評価方法が報告されてきている。上記の通り、神経筋疾患分野における筋超音波検査はまだ発展途上であるが、一部の疾患においては非常に有用であることが証明されている。この機会にぜひプロ―ブを手に取って筋を観察してほしい。