日本臨床神経生理学会学術大会 第50回記念大会

講演情報

関連学会合同シンポジウム

関連学会合同シンポジウム21 精神疾患に対する手法・治療のあれこれ (日本薬物脳波学会)

2020年11月28日(土) 08:30 〜 10:00 第5会場 (1F C-2)

座長:木下 利彦(関西医科大学 精神神経科学教室)、吉村 匡史(関西医科大学 精神神経科学教室)

[CSP21-4] 気分障害と統合失調症における認知機能障害の脳病態への脳構造画像的アプローチ

高橋隼 (和歌山県立医科大学 医学部 神経精神医学教室)

当教室では気分障害と統合失調症における認知機能障害の脳病態を脳構造画像的に検討している。気分障害(うつ病および躁うつ病)における脳梁白質神経線維の微細構造異常を拡散テンソル画像のtract-specific analysis(TSA)を用いて検討したところ、脳梁前部のfractional anisotropy(FA)値が両疾患で健常群と比較して低下しており、うつ病においてはFA値と認知機能障害の間に有意な相関関係が認められた(Yamada et al. 2015)。同手法を統合失調症に適応した研究では、側頭葉領域を連絡する脳梁白質線維で健常者と比較してFA値の有意な低下が認められ、同領域のFA値と遂行機能障害との間に有意な関連が認められた(Ohoshi et al. 2019)。さらにYamada et al. 2015とOhoshi et al. 2019のコホートを用い全脳の主要な白質神経路の微細構造異常をtract-based spatial statistics(TBSS)にて検討したところ、うつ病、躁うつ病、統合失調症のそれぞれの疾患において広範な脳領域でFA値の低下が健常群と比較して認められ、疾患群間に有意な差異は認められず、さらにYamada et al. 2015と同様にうつ病において脳梁および右帯状側のFA値と認知機能障害に有意な関連が認められた(Yamada et al. 2020)。現在はこれらのプロジェクトで収集したT1画像を用いて、気分障害と統合失調症における海馬subfields体積と認知機能の関連を検討しており、統合失調症群において健常群と比較して有意な体積減少があり、subfieldsの一部では体積減少と認知機能障害との間に有意な関連が認められている(Yasuda et al. in preparation)。これまでの気分障害と統合失調症を対象とした我々の検討では、疾患に共通する知見も得られる一方で疾患特異的な結果も得られている。本発表では以上の知見をもとに気分障害と統合失調症の認知機能障害の脳病態の相似と相違について脳構造画像的アプローチから言及していきたい。なお、本演題で発表する研究は実施施設の倫理委員会の承認を得て実施されている。