第39回一般社団法人日本口腔腫瘍学会総会・学術大会

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[ML-07] わかっていること、わからないこと  下顎骨辺縁切除と区域切除、どうやってきめるの?

〇大倉 正也1,2 (1.済生会松阪総合病院 歯科口腔外科、2.大阪大学大学院 歯学研究科口腔外科学第一教室)

【略歴】
大阪大学歯学部卒業 
大阪大学歯学部口腔外科第一講座研究生
大阪警察病院 歯科口腔外科 医員 
日本学術振興会特別研究員
大阪大学大学院歯学研究科 口腔外科学第一教室 助教ー講師ー准教授ー招聘教員
シカゴ大学 Ben May Institute of Cancer Research、研究員
済生会松阪総合病院 歯科口腔外科 部長
本課題は、多くの方が悩む問題です。2000年代前半までは、下顎歯肉悪性腫瘍/下顎骨悪性腫瘍の辺縁切除は、腫瘍が下顎骨に接触しているかあるいは骨皮質にのみに平坦に浸潤している症例に適応と考えられていました。虫食い状の浸潤や骨髄浸潤症例には適応はありませんでした。しかしながら、術前画像診断の精度に限界があり、骨髄浸潤がないと診断に至った症例でも、結果的には10-20%に病理的に骨髄浸潤が認めている。確かに骨浸潤ある場合、生命予後は悪化しますが、多くの論文は区域切除群と辺縁切除群で生存率に有意差はないと示しています。ただ区域切除軍のほうが、より進行した症例が多いことは明らかで、統計的なBiasが大きいと考えますが、逆に病理的に骨髄浸潤を認める症例でも、辺縁切除が可能となることがあることを示しています。最新の5年以内の論文では辺縁切除の適応が少し増加していると考えられます。骨再建の技術は向上しましたが、下顎骨辺縁切除でがんをコントロールできる場合、下顎は連続性を保ち、機能や審美性を維持することが可能であるからです。それでは、どのような症例が適応になるかですが、下顎菅浸潤症例は適応にはならないと考えられます。これは下顎管内のリンパ流に乗って下顎管内を転移することに起因するものではありません。現在まで下顎管内を転移し、離れた骨髄内に病巣を示す現象は扁平上皮癌では見られず、逆にAgniらは下顎管内を浸潤することはないと発表しました。また骨断端の病理検査が困難であるも含めて、骨断端より軟組織断端が重要であることも示されています。辺縁切除した残存下顎骨の高さが1cm以下では骨折や骨髄炎など合併症が生じると考えられており、1cm以上の骨の高さを温存するためには臼歯部では下顎管浸潤症例では論理的に辺縁切除の選択は無理があります。また、歯牙が存在する下顎骨の場合、歯根膜腔の肥大は、腫瘍の進展を考慮しますので、根尖まで浸潤を考慮する必要があります。すなわち十分な粘膜マージンを確保できる(歯がある場合は歯根膜腔の拡大のない)骨髄浸潤症例では、辺縁切除化可能な場合があると考えられます。再建技術の向上により、血管柄付き骨再建が可能でありますが、区域切除と辺縁切除では術後のQOLは異なっています。我々JOOGのデータでは骨髄浸潤ある151例のうち46例30%が辺縁切除選択されていました。本セミナーでは過去論文とJOOGデータを基にこの難題を見てみようと思います。