[I-P-078] 離島を抱える鹿児島県での危急を要する先天性心疾患の現状と問題点
Keywords:離島, 先天性心疾患, 胎児診断
【背景】鹿児島県は多数の離島を抱え南北600kmに及ぶ長大な医療圏を持つ地域である。鹿児島県は鹿児島市から約380km南に位置する奄美大島に中核病院を配置しており、小児医療の基幹施設として役割を担っている。しかし地理的条件に伴う搬送の制限や救急搬送における高次医療機関との連携に時間を費やすなど諸問題を抱えている。【目的】鹿児島県における離島から紹介された危急を要する先天性心疾患の現状を調査し、問題点を検討した。【方法】2010年5月から2014年4月まで離島から鹿児島大学病院を含む高次医療機関への母体搬送例、出生後紹介された先天性心疾患患者35例のうち、危急を要した8例を対象とした。対象症例は右室性単心室2例、完全大血管転位(TGA)2例、主要体肺側副動脈1例、卵円孔早期閉鎖に伴う新生児遷延性肺高血圧(PPHN)1例、大動脈弓離断複合1例、Uhl病疑い1例であった。【結果】鹿児島県全体での危急を要した先天性心疾患児の胎児診断率は78%で、離島では63%であった。母体搬送は4例であり、PPHNを除く7例は高次医療機関で周術期管理を受けた。TGAの1例は術後2ヶ月で浮腫、呼吸困難を認め、抗心不全療法を行いながら民間航空機で当院へ転院したが、検査後にショックとなり死亡した。胎児診断されなかった3例は高次医療機関と連携をとり出生後の循環管理が行われ、安定した状態で転院し手術に望めた。【考察・結論】離島での胎児診断率上昇の要因として適切な胎児心臓スクリーニング(レベル1)が行われ早期に鹿児島市内へ紹介され、胎児心精査(レベル2)が実施されていることが考えられた。問題点は離島から高次医療機関への紹介に際し、家族の転居や長期間の滞在の必要性等、生活の負担が大きいことが挙げられた。遠隔期の管理は小児循環器専門医が月1回定期的に外来診療に通うことで概ね問題はなかったが、急変の際の地理的要因、医療資源的要因は問題とされた。