[I-S04-03] 幹細胞を用いた心疾患研究
キーワード:幹細胞, iPS, 心疾患モデル
幹細胞には、胚性幹細胞(ES細胞)と組織幹細胞がある。胚性幹細胞は、胚盤胞から取り出した細胞で、三胚葉に分化可能なので、理論上全ての組織の細胞になることが可能である。iPS細胞作製の成功により、成体の組織由来の細胞から、胚性幹細胞と同様の性質をもつ細胞を作製することが可能となった。このような多分化能の特徴を生かして、iPS細胞由来分化細胞は、再生医療ならびに、疾患の表現系モデルとして創薬研究に用いられてきている。一方、成体の様々な器官において、組織幹細胞が存在することが報告され、分化細胞の補充を行っている可能性が指摘された。心臓においても、様々な幹細胞のマーカーを発現する細胞の存在が報告された。一部の心臓幹細胞(GATA4高発現細胞)は、パラクラインに心筋細胞の寿命を促進する効果を有することを我々は報告し、心臓幹細胞を心筋の機能保持に用いる、新たな用途の可能性を示した。心疾患研究をさらに発展させるためは、iPS細胞から分化誘導させた心筋の作製が現在最も有効な手法である。我々は、先天性心疾患患者や健常者より提供された4000株以上のB細胞株のライブラリーを保有しており、B細胞株からiPS細胞を作製することに成功した。さらに胚様体(embryonic body: EB)を経て心筋分化誘導を試みたところ、得られた心筋細胞塊の拍動の有無、強弱は、心筋塊によって異なった。病態モデルの確立のためには、iPS細胞から効率のよい心筋細胞へ分化が重要であり、その条件検討を実施した。これまでにEB形成条件がその後の心筋細胞への分化に大きく関与することが判明した。効率的な分化条件の検討を進めており、機能解析が可能な心筋モデルを確立しつつある。我々が保有する疾患B細胞株ライブラリーも活用して、再生医療、創薬研究に有用な心疾患モデル系を作製したい。