[II-P-068] カテコラミン誘発多形性心室頻拍に対してフレカイニド投与の催不整脈作用によってVTを来たしたと思われる1例
キーワード:CPVT, フレカイニド, 催不整脈作用
【背景】カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)は、小児期に発症し、運動により多形性心室頻拍、心室細動が誘発される。CPVTには様々なサブタイプがあり、その中の1つの遺伝子異常としてリアノジン受容体2型(RyR2)が発見されている。有効な治療薬としてβブロッカーやフレカイニドがありCYP2D6で代謝される。しかし、CYP2D6の遺伝子の変異の中には、薬物代謝効率が低いものがあるとともに、通常量の内服でも薬物の蓄積により催不整脈作用を来たすことがあると考えられている。【症例】33歳、女性【現病歴】小学校3年生時に急に走った時に意識消失し、その後3年間の間に同症状を3回経験した。マスターダブル運動負荷心電図でカテコラミン誘発多形性心室頻拍と診断され、βブロッカーの内服開始となり、以後外来フォローとなった。30歳時に心電図にて心拍数40/分と徐脈を認めたためβブロッカーをフレカイニドに変更したが、内服開始後30分程度で胸部不快感、動悸を自覚するようになった。精査目的でホルター心電図装着したところ、しばらくして心室頻拍となり前失神発作となったため入院管理となった。入院後フレカイニドをβブロッカーに変更し、以後気分不快感は消失し、外来フォローとなっている。CYP2D6の遺伝子変異を疑い検査したところCYP2D6*1/*1であった。【考察】本症例のCYP2D6はCYP2D6*1/*1のホモ接合体であり、薬物代謝効率は正常の遺伝子タイプであった。しかし、フレカイニド内服開始後より催不整脈作用を呈しており、フレカイニドが原因であった可能性が考えられる。【結語】カテコラミン誘発多形性心室頻拍に対してフレカイニド投与による催不整脈作用を来たしたと思われる1例を経験した。本症例のようにCPVTの治療としてフレカイニド投与後に催不整脈作用を呈することがあり、薬物血中濃度モニタリングを行い、慎重投与することが重要である。