The 52st Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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一般口演

心臓血管機能2

一般口演1-10(III-OR110)
心臓血管機能2

Fri. Jul 8, 2016 9:35 AM - 10:25 AM 第D会場 (オーロラ イースト)

座長:
小川 潔(埼玉県立小児医療センター 循環器科)

III-OR110-01~III-OR110-05

9:35 AM - 10:25 AM

[III-OR110-02] 腹部圧迫中EDP上昇は、左室スティフネスを反映する

松村 峻2, 増谷 聡1, 桑田 聖子1, 栗嶋 クララ1, 岩本 洋一1, 石戸 博隆1, 先崎 秀明1 (1.埼玉医科大学総合医療センター 小児循環器科, 2.埼玉医科大学総合医療センター 小児科)

Keywords:スティフネス、腹部圧迫、EDP

【背景】心カテ検査での拡張能評価は、EDP、PCWP、CVP等の圧で代用されることが多いが、これらは前負荷依存性であり、拡張能自体ではない。さらに小児では、安静時EDP上昇がごく軽度に留まる重度拡張障害症例も散見されるため、簡便・有用な拡張能評価法が期待される。腹部圧迫は静脈還流を増加させる簡便な手技であり、この際のEDP上昇は硬い心室ほど大きいと予測される。しかし静脈還流と左心の間には右心・肺循環があり、容積評価を考慮しないEDP変化が真にスティフネスを反映するかは検討の余地がある。腹部圧迫によるEDP上昇が、左室スティフネスと良好に相関するという仮説を検証する。
【方法】心カテを施行した種々の小児二心室循環100症例。高精度圧ワイヤーを用い、左室圧の最小圧とEDPを計測した。Fick法を用いて求めた一回拍出量係数で拡張期圧上昇(EDP-最小圧)を除して左室スティフネス(K)を求めた。左室圧を測定しながら、優しく深く腹部を圧迫し、EDP上昇を測定し、EDP上昇幅および腹部圧迫中最大EDPとKとの関連を検討した。
【結果】腹部圧迫によりEDPは有意に上昇し(10.2±3.8 vs 15.9±5.3mmHg, P<0.0001)、その上昇幅は、Kと正相関した(R=0.59, P<0.0001)。腹部圧迫中の最大EDPはさらに良好にKと正相関した(R=0.84, P<0.0001)。
【考察】腹部圧迫によるEDP変化、特に腹部圧迫後EDPは、左室スティフネスと良好に相関した。本結果は、左室圧測定中に腹部圧迫によりどこまでEDPが上昇するかを観察することにより、左室スティフネスを簡便に評価可能であることを示唆する。EDP変化は最小血圧と異なり、通常の生食を満たしたピッグテール・カテーテルと圧トランスデューサーで十分正確に評価できる。従って本法は施設を問わず幅広く適用可能であり、小児心疾患における拡張性評価への貢献が期待できる。