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[P54-01] 波動解析による肺動脈閉塞度の新たな評価方法の検討
キーワード:肺高血圧、閉塞性病変、位相角
【背景】肺高血圧(PH)の診療において肺小動脈の閉塞性病変の定量的評価は重要だが確立された方法はない。我々は肺循環を波動現象としてとらえ、波動現象の2変数(圧力と流速)の位相差により、肺小動脈の閉塞度の新しい評価方法を開発することを目的に研究を進めてきた。理論上、末梢側に閉塞病変がない場合には位相角θは0°となり、完全閉塞ではθは90°となる。これまで我々は肺動脈のシミュレーション回路で圧―流速同時測定ワイヤーを用い種々の閉塞度における位相角θを算出し、実際の測定値が理論値と一致していることを確認している。【目的】本方法による肺動脈閉塞度の評価を臨床的に検討することである。【対象および方法】同意の得られた患者22名のカテーテル検査時に肺動脈内の各部位で圧―流速同時測定ワイヤーを用い、位相角θを算出した。安定したデータが得られた症例は、主肺動脈で15例、右肺動脈で13例、左肺動脈17例で、安定したデータの得られた小児17例の左肺動脈の位相角を検討した。対象の年齢は3か月~11歳;中央値 2歳で、疾患の内訳は、対照群;1例、PH(-)群:5例(未手術2例、術後3例)、PH群:11例(未手術7例、術後4例)である。これらの位相角θを各パラメーターと比較検討した。【結果】左肺動脈の位相角θは、対照群:θ=1°、PH(-)群:θ=38.2±13.1°、PH(+)群:θ=57.0±14.0°とPH(+)群で大きな位相角を認めた。またこれらのθは平均肺動脈圧とr=0.20の、肺血管抵抗とはr=0.50の緩やかな正の相関を認めた。また総肺静脈還流異常症術後、左肺静脈狭窄症例で平均肺動脈圧23mmHg, 肺血管抵抗2.76UとPHは境界領域であったが、左肺動脈の位相角θは66°と大きく、左肺血管の閉塞を的確に反映している可能性がある。【結語】本方法は肺動脈閉塞度の新たな評価方法となり得る。