Poster (I-P12)

[I-P12-05] 新生児期に心不全となった冠動静脈瘻患児の治療時期の判断に2Dスペックルトラッキング法を用いた一例

^○小山 裕太郎, 高橋 努 (済生会宇都宮病院 小児科)

Keywords:Coronary arteriovenous fistula, 2D Speckle tracking echocardiography, Global longitudinal strain

【はじめに】右心系へ開口する冠動静脈瘻は、短絡量の多い場合生後早期に外科治療が必要となるが、適切な治療時期について定まった見解はない。近年、2Dスペックルトラッキング法(2DST)による局所の壁運動の定性的評価が可能となり、またGlobal longitudinal strain(GLS)がMモードによるEFより虚血や不同期の鋭敏な指標になるとの報告がされ、小児への活用が徐々に進んでいる。【症例】在胎40週4日、体重3335gで出生した女児。日齢2に心雑音を指摘され精査を受け、左回旋枝から右室に開口する冠動静脈瘻と診断された。冠動脈は径6mm大に拡張し短絡量が多く、早期に高肺血流性心不全に至った。利尿薬・ACE阻害薬による心不全管理を行いつつ、2DSTを用いた超音波検査で心筋虚血の評価を行い、適切な手術時期の判断を行った。装置は Toshiba社Artidaを使用し、日齢8、15、22、29と1週ごとに計測を行った結果、GLSはそれぞれ、-12.31、-17.11、-19.97、-16.91 (健常新生児参考 -17.5~-20.1)と推移し経時的な悪化は認めなかった。Radial/Circumferential strainについても一定の傾向は見られず、左回旋枝領域の局所的な壁運動変化も認めなかった。新生児期を過ぎた段階での外科治療を検討していたが、患者家族希望で転院となり日齢52に冠動静脈瘻閉鎖術が行われた。術後は壁運動も良好であり、抗血栓療法を行い外来経過観察となっている。【考察・結語】新生児期発症の冠動静脈瘻に対し2DSTを用いて心筋虚血の評価を行い、時期を逸することなく外科治療をしえた。2DSTによる計測値は機種や年齢によりばらつきが見られるため今後標準化が必要だが、心筋シンチや冠動脈CTの実施困難な新生児における心筋虚血の評価の一助になるものと期待される。