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[II-OR33-02] 単冠動脈を伴うTGAに対する動脈スイッチ手術の工夫
キーワード:Single coronary, TGA, Arterial switch operation
【背景】完全大血管転位症(TGA)に対する動脈スイッチ手術において単冠動脈の移植はリスクを伴う。移植困難な形態に対して種々の冠血行再建が考案されているが、その術後合併症を含め詳細は不明な点も多い。【目的】冠移植が困難なTGA1型(Shaher3A)の2例に対して、それぞれ異なる冠血行再建を行い、術後経過を検証した。【方法】2例ともAortic sinus1の前方から冠動脈が起始し、かつ主幹部が短いため、移植の受動距離が長くなる事より直接移植を回避した。症例1は日齢9、3.4kg。Murthyらよる動脈壁フラップを用いた冠血行再建を行った。症例2は日齢15、3.6kg。大動脈壁と共にAortic sinus1,2を一塊に切除後、折り畳む様にpouchを作成し新大動脈とDKS様に側々吻合を行い、新肺動脈幹は自己心膜で補填再建した。【結果】症例1では人工心肺離脱時に冠不全を認め、自己心膜で大動脈側フラップの延長を要した。また、術後早期に上行大動脈及び肺動脈共に狭窄所見を認めたため、再手術を要した。症例2は術後、両流出路に狭窄所見を認めず経過は良好である。【考察】単冠動脈の移植は1.冠動脈起始部 2.大血管関係 3.主幹部の距離が大きく影響する。今回はともに1.冠動脈起始が前方寄りで、3.主幹部が短かったため移植が危険と判断した。今回施行したMurthy法はAubert法と同様、両大血管壁を共有するため術後血管の自由度が制限され引き攣れる事で術後狭窄を来したと考えられる。一方、両大血管を完全に分離するSinus pouch法では自由度が高く、狭窄を認めていない。【結論】単冠動脈や大血管間を走行する冠動脈などの移植困難なTGAに対する動脈スイッチ術においては、両大血管壁を完全に分離するタイプの修復が望ましいと考える。