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[III-P35-01] フォンタン手術後の胸水貯留遷延を防ぐための治療戦略 -体肺動脈側副血行路に対するコイル塞栓,バソプレッシン投与の有効性-
キーワード:バソプレッシン, コイル, 胸水
【背景】Fontan手術後に遷延する胸水は,入院期間を延長させるだけでなく,胸腔ドレーン留置期間が長くなることによる感染リスクを上昇させる.【目的】体肺動脈側副血行路(APCs) に対するコイル塞栓術,術後バソプレッシン(VP)投与が,Fontan手術後の胸水遷延の予防になるかどうかを検討する.【対象】2011年から2016年に当院で行った Fontan手術30例.基本治療方針:Fontan手術前APCsに対するコイル塞栓術,Fenestration Fontan手術,術後NO吸入.術後VP使用 : 8例 (27%).HLHSまたはHLHS variant : 7例 (23%).Fenestrationなしまたは早期閉鎖 : 8例 (27%).【結果】Fontan手術後胸腔ドレーン留置期間mean,range (days) : 8.3,4-28.VP使用群 : 4.3,4-5.VP非使用群 : 9.7,4-28,P 0.01*.HLHS/HLHS variant群 : 12.7,4-28.非HLHS群 : 6.9,4-17,P<0.01*.多変量解析による胸水遷延リスク因子 : VP非使用P 0.02*.HLHSまたはHLHS variant P 0.02*.FenestrationなしP 0.9.【APCsに対する追加コイル塞栓術】術後胸水遷延したHLHS variant 2例に対しAPCs追加コイル塞栓術を行った.いずれも速やかに胸水は消失した.【考察】・VP群では術後volume負荷量が少なく,よりアウトバランスの印象がある.・VPには末梢血管抵抗を上げ血圧を上昇させるだけでなく,毛細血管漏出を軽減する可能性が示唆されている.遷延胸水を予防するメカニズムかもしれない.・APCsが術後に遷延する胸水の原因となるか文献的にはcontroversialだが,当院の症例ではAPCsに対する治療が胸水改善に有効であった.HLHS variantでは肺動脈の成長が悪いためAPCsが多量な症例が多く,術前塞栓しきれなかったAPCsが胸水遷延の原因になっている可能性がある.【結語】Fontan手術後VP使用は胸水遷延を予防できる可能性が高い.また,胸水遷延例に対して残ったAPCsに対し積極的に塞栓術を行うべきであると考える.