第55回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

術後遠隔期・合併症・発達

一般口演11(I-OR11)
術後遠隔期・合併症・発達 2

2019年6月27日(木) 15:50 〜 16:40 第5会場 (中ホールB)

座長:西川 浩(中京病院中京こどもハートセンター 小児循環器科)
座長:大場 淳一(北海道子ども総合医療・療育センター 小児心臓血管外科)

[I-OR11-01] 体肺血管抵抗バランスの崩れたFontan患者における神経体液性因子の反応

泉 岳1, 山澤 弘州1, 武田 充人1, 佐々木 理1, 谷口 宏太1, 佐々木 大輔1, 藤本 隆憲1, 辻岡 孝郎1, 永井 礼子1, 加藤 伸康2, 新井 洋輔2 (1.北海道大学 小児科, 2.北海道大学 循環器外科)

キーワード:Fontan, 体血管抵抗, 神経体液性因子

【背景】Fontan不全患者は高い中心静脈圧、低心拍出を特徴とする。そのような患者群以外に、低い体血管抵抗(lowRs)・高い心拍出量(HighCO)を保ちながら運動耐容能低下や高いFontan後合併症発症率を示す患者群が存在する。後者の患者群では不当に低い体血管抵抗とFontan特有の高い肺血管抵抗(Rp)により体肺血管抵抗バランス(Rp/Rs)が崩れている。所見のみでは抽出が難しい後者の患者群における神経体液性因子の反応は不明である。【目的】LowRs・HighCOを示すFontan術後患者の神経体液性因子マーカーの反応の特徴を明らかにすること。【方法】当院で2000-2018年にカテーテル検査歴のあるFontan術後患者を年齢の中央値で2群に分け、カテーテルデータ(CVP、Qs、 Rp、 Rs、 Rp/Rs)とカテーテル入院時血液検査項目(BNP、HANP、アドレナリン(Ad)、 ノルアドレナリン(NAd)、 ドパミン(DOA)、レニン、アルドステロン)との関連を検討した。値は平均値(±SD)で表記した。【結果】対象は142名、カテーテル検査数のべ273回、 年齢中央値(IQR) 10.0 (1.7-49.9)歳。 10歳未満群(CVP 11.6mmHg、 Qs 3.15 L/min/m2、 Rp 1.74 WU・m2、 Rs 20.06 WU・m2でRp/Rs(0.09)と有意な正の相関関係を認めたのはBNP 27.5pg/ml(±37.4)(R=0.441、 P<0.01)、 HANP 59.2pg/ml(±71.0)(R=0.442, P<0.01)であった。10歳以上群(CVP 11.1mmHg、Qs 2.59L/min/m2 Rp 1.64 WU・m2 Rs 28.10 WU・m2でRp/Rs(0.06)と有意な正の相関関係を示したのはNAd 384.6pg/ml(±192.4))(R=0.487、 P<0.01)のみであった。【考察】Rp/Rsバランスの崩れは直列循環であるFontan循環において、CVPから体血圧までの血圧幅が狭いことを意味し、前負荷の変化に対する血管抵抗および血圧の代償が困難な循環を示す。特に成人で問題になるこのような患者群では神経体液性因子であるノルアドレナリンのネガティブフィードバックによる分泌亢進反応が生じている可能性がある。