第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

多領域専門職部門シンポジウム

医師・CE合同

多領域専門職部門シンポジウム04(II-TRS04)
先天性心疾患の手術戦略・体外循環戦略の術前・術中共有のあり方

2020年11月23日(月) 16:00 〜 17:30 Track6

座長:小出 昌秋(聖隷浜松病院 心臓血管外科)
座長:高 寛(岡山大学 病院臨床工学部)

[II-TRS04-3] 先天性心疾患の手術戦略―予想内・外の術中所見に対する方針変更と情報共有―

中西 啓介, 川崎 志保理, 天野 篤 (順天堂大学医学部附属順天堂医院 心臓血管外科)

キーワード:医療安全, ノンテクニカルスキル, 先天性心疾患外科治療

【はじめに】先天性心疾患の手術では、術中に術前診断が覆るもしくは新たな疾患が見つかる事があり、外科医はその場の判断で治療を遂行しなければならない。今回、術中判断で術式変更もしくは対応を行った症例を供覧し戦略について考察する。【症例提示】1例目:術前診断が、両大血管右室起始、肺動脈狭窄の1歳女児。心内rerouting + 右室流出路再建の予定で手術を開始した。術中右室切開を行うと、primary IVFがスリット状で非常に小さく、さらに拡大切開予定部位には腱索が付着していたため心内reroutingを断念し、両方向性グレン手術+肺動脈絞扼術へ術式変更した。1年後に造影CTを撮像し、3D modelを作成した。フォンタン手術施行時の術中所見で、primary IVFと考えていたものはsecondary IVFであり、診断はファロー四徴となった。One and a half ventricular repairへ術式変更を行った。2例目:術前診断が、総肺静脈還流異常(1b)の生後2か月男児。術中右上肺静脈の上大静脈還流を認めたため、Warden変法+共通肺静脈幹-左房吻合へ術式変更で対応した。3例目:左上大静脈遺残、完全型房室中隔欠損、大動脈縮窄術後、肺動脈絞扼術後の4か月男児。心膜切開時に心嚢内出血を認め術場スタッフに出血していることを周知しながら手術を進行した。最終診断は、CV挿入時のガイドワイヤーによるcoronary sinus損傷出血であった。損傷部を修復し、通常通り手術を行った。【考察】小児心臓外科手術では、重要な術中判断を余儀なくされる場面を経験する。テクニカルスキルももちろん大事だが、ノンテクニカルスキルがこの状況では重要視される。我々はタイムアウト時に術式変更の可能性について周知を行っている。また、術中予測外の事が起きた場合は、可能であれば一度手を止めて術場の現状報告と方針変更を周知している。また、術中所見は積極的に写真、動画として記録し小児科との振り返りを行えるようにしている。