第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

優秀演題

フォンタン循環

優秀演題09(III-OEP09)
フォンタン循環破綻

2020年11月24日(火) 10:30 〜 11:00 Track1

座長:大内 秀雄(国立循環器病研究センター 小児循環器科成人先天性心疾患科)
座長:中野 俊秀(福岡市立こども病院 心臓血管外科)

[III-OEP09-2] Fontan-associated liver diseaseは術後早期から始まっている-フォンタン周術期の低心拍出と中心静脈圧上昇の関与-

中島 公子1, 関 満2, 畠山 信逸3, 新井 修平1, 浅見 雄司1, 池田 健太郎1, 下山 伸哉1, 岡 徳彦4, 小林 富男1 (1.群馬県立小児医療センター 小児循環器科, 2.自治医科大学 小児科, 3.群馬県立小児医療センター 放射線科, 4.群馬県立小児医療センター 心臓血管外科)

キーワード:FALD, Fontan, MRI

【背景】Fontan-associated liver disease(FALD)の病態は不明な点が多い. 我々は肝細胞特異性MRI造影剤(Gd-EOB-DTPA)を用いた造影MRI検査(EOB-MRI)で, Fontan術後1年の早期から肝障害を検出可能であると報告した. 術後早期の肝障害はFontan周術期の要因が影響している可能性がある.
【目的】EOB-MRIで認めるFontan術後早期肝障害へ寄与する周術期因子を明らかにすること.
【方法】単施設後方視的観察研究. 対象は2012年から2017年にFontan術後1年時点でEOB-MRIを施行した37例. 肝障害の程度はEOB-MRI肝細胞相での肝実質造影低下範囲により, Grade 1(normal), Grade 2(segmental), Grade 3(regional), Grade 4(diffuse)と定義した. 重症度を軽症群(Grade1 or 2), 中等症群(Grade 3), 重症群(Grade 4)の3群に分け, この重症度に寄与する周術期因子を傾向検定を用いて検討した. 検討項目はFontan手術時年齢, ICU入室日数, 人工心肺時間, Fontan術式, 周術期肝機能, 周術期血行動態指標(CVP, mABP, CI, 及びcatecholamine index;いずれも術後5日間の平均値)とした.
【結果】MRI撮影時年齢は平均3.5±1.0歳. 軽症群9例, 中等症群14例, 重症群14例で, 22例で開窓Fontan手術が施行. 手術時年齢, ICU入室日数, 人工心肺時間, 術式, mABP, catecholamine indexと重症度において有意な関係は認めなかった. 重症度と関連した項目は, 周術期の最大ALT値 (軽症群から順に, 中央値24[IQR19,82], 61[25,560], 514[39,1516] U/L; P=0.028), CVP (11[10,12], 12[11,13], 15[11,16] mmHg; P=0.008), CI (4.8[4.1,5.4], 3.8[3.6,4.6], 3.6[3.1,4.2] L/min/m2, P=0.013)であった.
【結語】EOB-MRIで認める術後早期の肝障害はFontan周術期のCVP上昇とCI低下の影響を受けていた. 周術期に血行動態が不良であった症例は術後早期から肝障害が高度であり, FALD進行のリスクが高いことが考えられ, 注意深くフォローアップする必要がある.