第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラル(I)16(OR16)
術後遠隔期・合併症・発達3

指定討論者:篠原 徳子(東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科)
指定討論者:塩野 淳子(茨城県立こども病院 小児循環器科)

[OR16-1] 先天性心疾患術後乳び胸管理における最大のリスクは何か?

多喜 萌, 戸田 紘一, 連 翔太, 小島 拓朗, 葭葉 茂樹, 小林 俊樹, 住友 直方 (埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)

キーワード:術後乳び胸, 難治性乳び胸, SVC閉塞

【背景】先天性心疾患術後の2-5%に乳び胸水が発生するとされており,脂肪を制限する食餌療法(脂肪制限食,MCTミルク,絶飲食),脂肪吸収を制限するオクトレオチド,機序は不明だがステロイドがある程度有効であると報告されている.これら内科的治療に抵抗性の乳び胸水は極めて難治性である.【方法と目的】食餌療法,オクトレオチド,ステロイドで改善しなかった例を難治性として,難治性となるリスクファクターを検討する.さらに,死亡リスクについても検討を行う.【結果】2013年1月から2019年12月の期間に当院で実施された先天性心疾患に対する外科手術927例中,29例(3.1%)が術後乳び胸を発症した.発症例の手術時の年齢は日齢1~368(中央値:日齢134),体重は1736~7711g(中央値:4824g)であった.乳び胸の診断後、6例(20%)は食餌療法のみで軽快し,23例はオクトレオチドを含む治療が行われた.内科的治療に反応せず難治性と判断され,9例(31%)に胸膜癒着術,リンパ管静脈吻合術,胸管結紮術のいずれかが実施された(重複あり).結果乳び胸の改善を得られたのは6例であり,3例(13%)は改善なく死亡に至った.死亡3例に共通して,経過中のSVC閉塞が認められた.【考察】当院の検討では,これまで先天性心疾患術後の乳び胸の発症リスクとされている低日齢,低体重,単心室形態,姑息的手術は難治性のリスクファクターとならなかった.しかし低日齢,低体重は死亡のリスクファクターであることが示唆された.さらにSVC閉塞例が3例とも死亡に至っていることから,乳び胸治療においてはSVC閉塞を予防し,積極的閉塞解除に努めることが肝要と考えられた.【結語】先天性心疾患術後乳び胸管理においてSVC閉塞は重要なリスクファクターであり,周術期の予防に努め,可能な限り解除を行うことが必要である.