[OR25-2] 補助人工心臓装着後の小児における薬剤耐性菌感染と予後への影響
キーワード:補助人工心臓, 感染症, 薬剤耐性菌
【背景】内科的治療抵抗性の重症心不全患者において補助人工心臓(VAD)は有効なデバイスであるが、長期管理によりデバイス関連感染さらには薬剤耐性菌感染のリスクが高まることが知られている。これまで、成人における報告はあるが小児患者ではまとまった報告がなく、耐性菌感染の現状や予後に与える影響は不明である。【目的】VAD装着後小児患者における薬剤耐性菌検出の状況と、耐性菌感染が予後に与える影響について検討すること。【方法】2000年1月から2020年1月に当院でVAD(2011年まではNipro VAD、2012年以降は体外型がBerlin Heart EXCOR、植込み型はHeart Ware, EVAHEART, Jarvik 2000)装着術を施行した15歳以下の症例を対象とした。EXCOR群(E群), 植込み群(U群), Nipro群(N群)に分け検討した。VAD植込み後24時間以内の死亡例は除外した。【結果】症例は40例(男児20例)で、E群18例、U群12例(Jarvik 2000 4例、Heart Ware 5例、EVAHEART 1例)、N群 10例であった。VAD装着前からの耐性菌検出例と装着後に初めて耐性菌が検出された症例はそれぞれE群(7例、2例), U群(3例、3例), N群(4例、4例)であった。検出された耐性菌は、MRSAが21例、ESBLが5例、MDRPが1例であった(重複あり)。耐性菌による菌血症についてはE群, U群では認めず、N群では4例認めた。VAD装着中の死亡については、E群1例(感染例)、U群1例(感染例)、N群5例(感染4例、非感染1例)であったが、感染例と非感染例での死亡に有意差はなかった(P=0.11)。また、移植後の死亡にも感染の有無は影響していなかった。【結語】耐性菌検出の頻度や菌血症の発生頻度はN群で高かったが、E群、U群では成人の既報と同等の結果であった。耐性菌感染例と非感染例では生命予後に有意な差は認められなかった。