The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

デジタルオーラル

胎児心臓病学

デジタルオーラル(II)10(P10)
胎児心臓病学2

指定討論者:馬場 健児(岡山大学医学部 小児科IVRセンター)

[P10-2] 上心臓型総肺静脈還流異常症の垂直静脈走行と臨床経過

杉谷 雄一郎1, 宗内 淳1, 江崎 大起1, 松岡 良平1, 土井 大人1, 渡邉 まみ江1, 落合 由恵2 (1.九州病院 小児科, 2.九州病院 心臓血管外科)

Keywords:vise型, 動脈管, 垂直静脈狭窄

【背景】上心臓型総肺静脈還流異常症(TAPVC)における垂直静脈は共通肺静脈腔から左肺動脈前方を上行して無名静脈へ還流することが一般的であるが、左肺動脈後方を上行する場合は動脈管および左主気管支との間を走行し、生後に狭窄症状から重度チアノーゼ・肺うっ血を合併する例が経験される。生後心臓造影CT検査を実施した上心臓型TAPVC例の垂直静脈走行および生後の臨床経過を検討した。【方法】過去10年間に入院した上心臓型TAPVC 12例(男5例)において、垂直静脈が左肺動脈の前方を走行する型(通常型)と左肺動脈後方および左主気管支前方を走行する型(vise型)に分類して臨床症状を比較した。【結果】出生週数38.3(37.0─41.4)週、出生体重2703g(1840─3524), 性別(男児) 5例、出生後の経皮的酸素飽和度(SpO2) 84.5(70─92)%、 胎児診断例 1例であった。造影CT検査施行時日齢は5(0─131)日、TAPVC修復術実施時日齢 14(0─133)日であった。通常型は9例、Vise型は3例であった。通常型およびvise型の2群間の比較は、出生週数、体重、性別、SpO2、TAPVC修復術日齢は各々、38.9(37.0─41.4) 週vs 37.2(37.2─37.9)週、2776 (1840─3524) g vs 2630 (2526─2935) g、4例(44%) vs 1例(33%)、85 (70─92)% vs 75 (75─85)%、3(0-14) 日 vs 22(0-133) 日であった。Vise型ではSpO2 およびTAPVC修復術実施時日齢が低い傾向がみられた。Vise型の1例は、出生直後は垂直静脈が狭窄し血流パターンがnon phasicであったが、動脈管閉鎖に伴い狭窄が軽快し血流パターンがphasicとなりSpO2も85%から92%へ上昇した。そのため待機的に生後14日に修復術を行うことができた。【考察】上心臓型TAPVC症例で、胎内の垂直静脈走行を診断することは生後の臨床経過を知る上で重要であり、動脈管閉鎖機転により垂直静脈狭窄は軽快し待期的手術が可能となる場合がある。