The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

胎児心臓病学

デジタルオーラル(II)10(P10)
胎児心臓病学2

指定討論者:馬場 健児(岡山大学医学部 小児科IVRセンター)

[P10-3] 動脈管瘤内の血栓により左肺動脈狭窄を来した新生児例

白水 優光1, 漢 伸彦2, 倉岡 彩子1, 兒玉 祥彦1, 中村 真1, 石川 友一1, 佐川 浩一1, 小田 晋一郎3, 中野 俊秀3 (1.福岡市立こども病院 循環器科, 2.福岡市立こども病院 胎児循環器科, 3.福岡市立こども病院 心臓血管外科)

Keywords:動脈管瘤, 血栓, 肺動脈狭窄

【緒言】動脈管瘤は正期産新生児の8.8%に認め、約30%に動脈管内血栓を認めるが、多くは血栓の有無に関係なく無症状で自然閉鎖する。今回、動脈管瘤内の血栓により左肺動脈狭窄を来した症例を経験した。【症例】母体は一般産科で周産期管理を行われ、異常の指摘はなかった。患児は在胎40週3060gで仮死なく出生した。日齢2にSpO2 93%の低下を指摘され、前医に入院となった。入院時、心臓超音波検査で心房中隔欠損症、動脈管閉鎖を確認された。ネーザルハイフロー管理、酸素投与を行われたがSpO2変動の改善なく、日齢6の心臓超音波検査で左肺動脈内の血栓を疑われ、精査加療目的に日齢7に当院に搬送された。心臓超音波検査で左肺動脈起始部は高輝度腫瘤で占拠され、血流速度は2.3m/sと上昇していた。腫瘤は動脈管と連続性が見られた。造影CT検査で動脈管は最大内径6mmと管状に拡張しており、内腔は低吸収腫瘤によって占拠されていた。一部が左肺動脈起始部に突出し、約4mmにわたり辺縁のみが造影された。動脈管内血栓または腫瘤による左肺動脈狭窄と診断した。血栓溶解療法による出血リスクや治療の確実性を考慮し、日齢8に腫瘤摘出及び動脈管切除術を行われた。術中所見では、動脈管の大動脈側は閉塞し、管内は血栓で充満し瘤状の拡張が見られ、CTと同様の所見であった。なお、患児に血栓性素因や中心静脈カテーテル挿入歴はなく、造影CT検査で他部位の血栓は指摘されなかった。母体に特記すべき服薬歴もなかった。【考察】動脈管瘤の一部は管内の血栓充満により器質的に閉鎖する。肺動脈側の閉鎖が遅れた際、瘤の縮小が制限され、閉鎖遅延による血栓塞栓症のリスクが報告されている。本症例も動脈管瘤の形態から類似の病態が考えられた。【結論】肺動脈側の閉鎖が遅れる動脈管瘤症例では、肺動脈血栓症のリスクを念頭に慎重なフォローを要する。