[P11-5] 乳児期早期に顕著なチアノーゼと高肺血流心不全を呈し,早期心内修復術を必要とした総肺静脈還流異常IV型(IIa+Ia)の1例
Keywords:総肺静脈還流異常, チアノーゼ, 心内修復術
【はじめに】肺静脈閉塞を伴わないTAPVDでは,心房間交通を確保することで比較的状態が安定し,高肺血流心不全はありながらもチアノーゼは軽度で乳児期後半まで心内修復術(ICR)を待機できることが少なくない.今回,高肺血流心不全に加え顕著なチアノーゼを呈したためにICRを急がざるを得ない例を経験した.その病態について考察する.【症例】GA39w15d,BW 3066gで出生.SpO2 87%のため当院へ搬送.心エコー検査でTAPVD IV型(IIa+Ia)と診断.Iaは通常より細い左上肺静脈1本のみで右全て及び左下2/3以上の肺静脈はCSへ還流し,病態的にはほぼIIaであった.卵円孔に対し日齢6にBASを施行.平均肺動脈圧15mmHg.生後5-6か月時の待機的心内修復術の方針とした.2か月時,多呼吸,チアノーゼが進行.SpO2 78%,CTR 67%,肺うっ血顕著.CS,右心系の拡大も顕著で高肺血流は明らか,三尖弁逆流3.8m/s,57mmHgと肺高血圧の進行が見られた.心房間交通の狭小化なし.カテーテル検査では平均PA圧34mmHg,Qp/Qs=3.15,PO2は肺動脈90%に対し大動脈78%であった.CTでCSはTV近くに開口,巨大CSのためLAが圧排されていた.2.5か月でICR施行.9か月時のカテーテル検査で平均PA圧16mmHg,PVRI=1.8と肺高血圧は改善していた.【考察】TAPVD IIaのCSは通常通りIVCとTVの中間に開口する場合と,後方偏移しIVC近傍に開口する場合がある.IVC近傍開口,かつEustachian’s valveがあると比較的LAへ血流が導かれやすくチアノーゼが軽度で済む可能性があるが,本症例ではCSはむしろTVに近く,初回カテ時にも右PA造影のreturn相でLVよりRVが濃く造影されており,エコーでもCSからの血流は殆どTV側へ吸い込まれる様子が観察された.CS血流方向が解剖学的に規定されるためRA内での混和が不十分で,顕著な高肺血流にもかかわらずチアノーゼが強く出た.CS開口部の位置も考慮に入れ手術時期を決定する必要があると考えられる.