第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

画像診断

デジタルオーラル(II)17(P17)
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指定討論者:岡本 吉生(香川県立中央病院 小児科)

[P17-2] 心臓MRIで経過が観察できた心筋炎の1例

谷為 乃扶子1, 鎌田 政博2, 中川 直美2, 石口 由希子2, 森藤 祐次2, 川田 典子2, 岡本 健吾2, 土橋 智弥2 (1.広島市立広島市民病院 放射線科, 2.広島市立広島市民病院 循環器小児科)

キーワード:急性心筋炎, 心臓MRI, T1 mapping

【背景】心筋炎の診断のgold standardは心筋生検であるが,病変の採取が不確実で,侵襲性が高い.心臓MRIは,形態,壁運動,浮腫や線維化などの心筋性状や血流を多角的に評価でき,心筋炎の診断や病勢把握に有用な非侵襲的検査である.急性心筋炎の心臓MRI診断の推奨基準としてLake Louise Criteriaが2009年に作成され,2018年に定量評価を取り入れた2018 Lake Louise Criteriaに改訂された.【目的】発症時,回復期,再発時に心臓MRIを撮像できた心筋炎症例を経験したので,若干の文献的考察とともに報告する.【症例】12歳男児,生来健康.2週間前に咽頭痛があった.発症当日,夕食後に前胸部痛が出現.心電図のST上昇,トロポニンTおよびCKMBの上昇を認め,急性心筋炎として加療され,1ヵ月半後に退院した.発症5ヵ月後に前胸部痛が出現し,再発を認めた.発症17日目,2ヵ月後の回復期,再発時にMRI検査を施行した.【結果】Cine MRIでは左室壁運動低下がみられた.Black blood T2強調像では,撮像時期で高信号域が変化した.造影MRIでは,心外膜側主体に早期濃染および遅延濃染がみられた.T1 mappingでは,native T1,ECVとも高値を示した.本症例はLake Louise Criteriaの診断基準を満たしていた.【考察】T2強調像で変化した高信号域は,活動性炎症の変化を捉えているものと考えられた.T2強調像で高信号の心内膜側では早期濃染が指摘できなかったが,アーチファクトもあり,評価困難であった.遅延濃染は心外膜側に認められ,3回の撮像で変化がないことから,初回罹患時の病巣の壊死,線維化をみていると考えられた.T1強調像での定性評価は困難であったが,T1 mappingでは高値が計測され,定量評価が有用であった.