The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

集中治療・周術期管理

デジタルオーラル(II)32(P32)
集中治療・周術期管理1

指定討論者:平松 祐司(筑波大学医学医療系 心臓血管外科)

[P32-5] バルーンカテーテルが診断治療に有用であった気管腕頭動脈瘻の女児例

山本 英一1, 中野 威史1, 渡部 竜助1, 檜垣 高史2, 石戸谷 浩3 (1.愛媛県立中央病院 小児科, 2.愛媛大学医学部小児科, 3.愛媛県立中央病院 心臓血管外科)

Keywords:気管腕頭動脈瘻, 腕頭動脈離断術, カテーテル検査

【背景】気管切開後の合併症としての気管腕頭動脈瘻は小児循環器医や心臓外科医も知るべき合併症である。今回術前カテーテル検査にて術式を決定し、外科的治療中にも有効であった症例を経験したので報告する。【症例】11歳女児。低酸素性脳症にて2歳時に気管切開を施行。16歳時気管から出血し、気管腕頭動脈瘻からの出血。気管カニューレを押し込むことで止血を行った。出血性ショックから回復したため、外科的治療を考慮。術式は腕頭動脈結紮+鎖骨下動脈間バイパスが最も安全と考えられたが、左右の鎖骨下動脈が3mmと非常に細いため、バイパス術は困難と考えられた。腕頭動脈離断のみでは脳血流の低下による脳血管障害や右上腕の阻血が危惧され、手術室にて評価し手術適応を決定することとなった。大腿静脈より6Frバルーンカテーテルを挿入し、右腕頭動脈に留置。閉塞試験を開始。右腕頭動脈の完全閉塞後、右腕頭動脈の断端圧は50mmHg(体血圧100mmHg)。INVOSにて脳血流を評価。閉塞後左78、右74と右は4低下したのみであり有意な血流低下は認めなかった。閉塞後造影にて頭部の血管は左右差なく造影された。以上より、右腕頭動脈離断が可能と考え、引き続き手術を開始した。カテーテルは腕頭動脈の操作中の出血を危惧して下行大動脈に留置。腕頭動脈を処理中に瘻孔部から大量出血が認められ、血圧低下。術野での止血困難であったため、あらかじめ血管内に留置していたカテーテルのバルーンにて腕頭動脈起始部を閉鎖。出血がコントロールでき、腕頭動脈離断を終えた。【考察】気管腕頭動脈瘻は出血を起こすと手術到達例においても死亡率が極めて高い。最も低侵襲である腕頭動脈離断術単独で問題ないことを術前に評価することは重要で、カテーテル検査は非常に有効であった。またカテーテルバルーンによる止血も術中効果的であった。【結語】術前のカテーテル検査により手術がより低侵襲で施行できた。