[P57-4] 新生児期における単純型大動脈縮窄症の治療適応
キーワード:単純型大動脈縮窄症, 大動脈峡部, 治療適応
【背景】単純型大動脈縮窄症は、出生後に大動脈峡部isthmusが拡大して治療を要さない場合があり、プロスタグランジン製剤(PGE1)の開始判断が困難な場合がある。【目的】新生児期における単純型大動脈縮窄症の治療介入の指標について検討すること。【対象・方法】2009年から2019年までに当院NICUに入室し、単純型大動脈縮窄症と診断した12例。在胎週数33~40週(中央値36週)、出生体重1230~2850g(中央値1953g)。PGE1を使用せずに経過観察した10例(Ni群)。心収縮低下や心不全症状のため大動脈修復術を施行した2例(Op群)。上行大動脈径ascAo(mm)、isthmus径(mm)、isthmus/ascAo径比(I/A ratio)、LVDd%などをNi群ではA:診断時(日齢0~2)、B:日齢4~13、C:日齢14以降で、Op群では診断時に測定した。【結果】診断時I/A ratioはOp群で0.22,0.25、Ni群で 0.27~0.4(中央値0.32)。Ni群の3例で診断時のisthmus径(mm)<{体重(kg)}(mm)であった。Ni群(A→B→C)でisthmus(2.15±0.25→2.63±0.32→3.64±0.57, P<0.05)、ascAo(6.57±0.67→6.97±0.75→7.37±1.34, P<0.05)、I/A ratio(0.32±0.03→0.37±0.04→0.50±0.11, P<0.05)、LVDd%(90.7±15.0→102.1±23.2→119.2±19.6, P<0.05)といずれも経時的に有意な拡大を認めた。Ni群の全例でPDAが縮小・閉鎖したが、循環不全や心収縮低下などを来した症例はなく、治療介入を要さなかった。PDA残存例はいずれも左右シャントであった。【考察】isthmus径(mm)≦{体重(kg)}(mm)で大動脈修復術の適応との報告がある。本検討では、症候性でなくI/A ratio>0.25であれば、isthmus径(mm)≦{体重(kg)}(mm)であってもPGE1を使用せず慎重な経過観察で新生児期の治療介入を回避できる可能性が示唆された。I/A ratio増大に並行してLVDd%・ascAo径も拡大しており、出生後の肺血流増加に伴う心拍出量の増加がisthmus径の拡大に影響している可能性がある。