第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

周産期・心疾患合併妊婦

デジタルオーラル(II)57(P57)
周産期・心疾患合併妊婦

指定討論者:金井 貴志(防衛医科大学校 小児科学講座)

[P57-5] 良好な経過で第3子を出生したフォンタン術後女性

石戸 博隆, 佐藤 竜太朗, 関根 麻衣, 松村 峻, 岩本 洋一, 増谷 聡 (埼玉医科大学総合医療センター 小児科)

キーワード:Fontan, 出産, 管理

【背景】Fontan術後症例の妊娠・出産は、必ずしも禁忌には該当しないが、状態に応じたリスクを有し、相応の覚悟と管理を要する。当院で初のFontanの出産を経験した。梗塞既往があったが第三子を良好に出産した症例を報告する。
【症例】2経産の28歳女性。単心室・共通房室弁・大動脈縮窄で、2歳時にTCPC(lateral tunnel)・DKS・房室弁形成術を施行された。18歳で第1子を出産(35週2日、帝王切開、2498g)。21歳で第2子を出産(切迫早産、29週3日、帝王切開、1023g。児は細菌性髄膜炎・脳膿瘍・精神発達遅滞)。その後、怠薬・喫煙もあり、腎梗塞・脳梗塞が相次いだが、幸い後遺症なく軽快した。25歳時にVV短絡をAVPで閉鎖した。妊娠非推奨であったが今回妊娠し、自宅から近い当院での出産を強く希望し、妊娠23週で当院を紹介受診した。NYHA 1で共通房室弁逆流中等度であった。リスク分類はmodified WHO分類III、CARPREGスコア1点・ZAHARAスコア3.25点(それぞれ母体心疾患合併症率27%, 43.1%)であった。ワーファリン・ACE阻害薬を休止、アスピリンで維持、33週から入院・ヘパリン開始、アスピリンは前日まで、今回も帝王切開、脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔の併用(sequential CSE)、Aライン・CVライン挿入、術後ICUに一泊の方針とした。活動量計を装着したところ、歩数は入院までが2000-7000歩(平均約3000歩程度)であったのに対し、入院後分娩までは平均約1000歩と安静度増加が示唆された。36週5日、2555gで元気な女児を出産、産褥経過も良好で8日目に母子ともに退院した。現在産後約一年、NYHA1、末梢静脈圧12mmHg(推定CVP 10 mmHg)で外来通院中である。
【結論】前施設多科から貴重な情報が得られたこと、本人の自覚が増してコンプライアンスがよくなったこと、院内の連携がうまくいったことが、母子の非常に良好な経過に貢献した。比較的若い年齢であったことも有利であったと考えられた。