第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラル(II)84(P84)
外科治療6

指定討論者:松久 弘典(兵庫県立こども病院 心臓血管外科)

[P84-3] 総動脈幹症に対する手術方針と危険因子の検討

櫻井 一1, 野中 利通1, 櫻井 寛久1, 小坂井 基史1, 村上 優1, 鎌田 真弓1, 大橋 直樹2, 西川 浩2, 吉田 修一朗2, 吉井 公浩2, 佐藤 純2 (1.中京病院 心臓血管外科, 2.中京病院 小児循環器科)

キーワード:総動脈幹症, 手術成績, 治療戦略

【目的】総動脈幹症(TrA)の本邦の手術死亡率は30%程度から数%程度に改善してきたもののいまだ満足いくものではない.当院ではおおむね体重2.5 kg未満の低体重,術前high flowなどshock合併,心疾患以外の合併疾患を伴う例に対しては原則的に両側肺動脈絞扼術(BiPAB)を介した二期的修復術を,それ以外は一期的修復術を行ってきた.これまでの当院での手術方針の妥当性と死亡の危険因子について検討した.【方法】2002年以降に手術介入をした連続19例を対象とした.機能的単心室例は除外し,CoA/IAA合併の5例は対象とした.一期的修復例は13例(I群),BiPABを介したのは6例(II群)で両群の在胎週数,出生時体重に有意差はなく,I群のBiPAB時は生後4.0±2.5日,体重2.5±0.4 kg,I, II群の心内修復術時は生後44.3±16.1, 20.8±17.4日,体重3.4±0.4, 3.1±0.5 kgで日齢のみ有意差があった.全例Rastelli手術を行い,導管サイズや,手術,体外循環,大動脈遮断時間に有意差はなかった.【結果】I群に入院死亡が3例,II群に手術死亡,退院後死亡が各1例あったが,両群の死亡率に有意差はなかった.死因は肺出血,消化管穿孔,冠動脈狭窄,truncal valve (TrV)閉鎖不全による心不全などだった.術前TrVの流速,逆流の程度にも有意差はなかった.全体で冠動脈入口部狭窄合併7例,TrVの4尖弁を7例に認めたが,合併頻度に両群で有意差はなかった.しかし,死亡例では生存例に比しCoA/IAA合併頻度が3/5, 2/14,冠動脈狭窄が3/5, 4/14,4尖弁3/5, 4/14と多い傾向にありかつそれらを重複して合併する例が多かった.【結語】各手術方針で術後死亡率に有意差はなく,適切に症例の選択がなされた結果と思われ現在の方針は妥当なものと考えられた.CoA/IAA合併例は二期的に行った方が良い可能性があり,冠動脈入口部狭窄も高頻度に伴いうるため術前に十分疑って精査し積極的に介入することでさらに成績改善の可能性があると思われた.