[P85-4] 潜在性の体肺側副血管によりarterial switch術中に左房圧上昇に伴う進行性の僧帽弁逆流をきたし, 左心補助下で緊急カテーテル検査を行ったdTGA(I)の1症例
キーワード:TGA, APCAs, arterial switch
【症例】在胎38週3日, 3134gで出生. 出生後Apgar score 1分値は5点, SpO2 60%であり, 同日にrestrictive PFOに対し緊急BAS施行. 術前SpO2はroom airで90%前後であった. 日齢6にdTGA(I)(Shaher 1), PDAに対しarterial switch施行. 術中, 左房からの還流血液が非常に多く, 人工心肺吸引をPFO経由で追加して対応した. 心停止解除後, 人工心肺離脱の際に左房圧上昇が疑われたため, 左房圧を測定した. 中心静脈圧7mmHgに対し左房圧22mmHgであり, 経食心エコーで急速に進行する僧帽弁逆流を認めた. 体肺側副血管の存在が疑われ緊急カテーテル検査を行う方針とし, 検査中の血行動態破綻が懸念されたため, 遠心ポンプでの左心補助下, 仮閉胸の状態で実施した. 右大腿アプローチで大動脈造影を施行したところ, 下行大動脈から体肺側副血管が造影された. 2本の体肺側副血管に対しコイル塞栓を行い, 体肺側副血管からの供給血流が制御されたことを確認. その際, 遠心ポンプをFlow downした状態で左房圧が7mmHgまで下がっていることを確認できたため, 手術室へ戻り遠心ポンプを離脱し, 閉胸した. 術後13日目に合併症なく退院した. 【考察】 これまでの文献から, dTGAのarterial switch術後早期に4%-15%の患者で介入を要する体肺側副血管が見られたと報告されており, 多くは術後2週間以降にカテーテル検査およびコイル塞栓が実施されていた. 本症例は体肺側副血管の存在によりarterial switch直後に左房圧上昇をきたして急速に進行する僧帽弁逆流を認めた. 左心補助下でカテーテル検査・コイル塞栓術を行い, 血行動態の破綻を見ることなく安全に検査を終え, 同日に閉胸することができた. 術中に上記のストラテジーを経て生存した症例は極めて稀であり, 文献的な考察を交えて報告する.