第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラル(II)87(P87)
外科治療9

指定討論者:太田 教隆(愛媛大学大学院医学系研究科 心臓血管呼吸器外科)

[P87-3] 再発性重症閉塞性肥大型心筋症に対する治療戦略

椛沢 政司1,2, 松尾 浩三2, 岡嶋 良知3, 川副 泰隆3, 武智 史恵3, 森島 宏子3, 丹羽 公一郎3,4 (1.千葉市立海浜病院 心臓血管外科, 2.千葉県循環器病センター 心臓血管外科, 3.千葉県循環器病センター 小児科, 4.聖路加国際病院 循環器内科)

キーワード:HOCM, SAM, 手術

【症例】症例は11歳女児。Noonan症候群、閉塞性肥大型心筋症(HOCM)、accessory mitral valveの診断にて6歳時に経大動脈的に中隔心筋切除術+経心房中隔的に余剰僧帽弁前尖切除術を施行している。術後左室流出路狭窄は残存したため慎重に経過観察していたが、経年的に増悪(LVOTPG>100mmHg)し、心室性不整脈の出現を認めるようになってきたため、このままでは1-2年以内に不整脈による突然死の可能性が高いと判断し、再発性重症HOCMに対する手術の方針となった。CTにて高度の全周性左室心筋肥厚(32-33mm)および心尖部の瘤状変化を認めた。また、エコーにて僧帽弁前尖の収縮期前方運動(SAM)の所見を認めた。【治療戦略】(1)中隔心筋切除について。経大動脈弁的アプローチのみで良いか。経僧帽弁的アプローチや経心尖部アプローチも追加すべきか。(2)僧帽弁に対する処置について。初回arrestから機械弁による僧帽弁置換術を施行するか(その場合、成長期前なので再手術の可能性も高い)、accessory mitral valve追加切除ないし僧帽弁前尖短縮等の形成術を施行し、SAMが残存するときはsecond arrestとして僧帽弁置換術を施行するか。中隔心筋切除のみで僧帽弁置換は不要か。(3)心尖部瘤に対する処置は必要か。(剥離操作中の心室性不整脈の危険性がある。HOCMが解除されれば進行しなくなるか)。(4)心筋保護について。間欠的な選択的順行性心筋保護で良いか、持続的な逆行性心筋保護を追加すべきか。(5)ペースメーカーについて。積極的中隔心筋切除により高度脚ブロックはほぼ必発であり、リード縫着はやむなしとして、ジェネレータは最初から挿入するべきか後日必要に応じて挿入するか。通常のDDDで良いか。致死性心室性不整脈の出現に備えてICDを挿入するべきか(小児では誤作動の報告も多い)。(6)閉胸および術後管理の戦略をどうするか。以上の問題点につき、当院でのカンファレンス結果および手術について報告する。