[P87-2] 化膿性心外膜炎による心タンポナーデに合併した感染性仮性大動脈瘤に対し手術を施行し救命しえた一例
Keywords:化膿性心外膜炎, 感染性仮性大動脈瘤, 心タンポナーデ
【背景】開心術の既往のない心嚢水貯留は,心筋炎による心不全などではしばしば経験するが,特発性の化膿性心外膜炎による心タンポナーデに仮性大動脈瘤を合併する小児例は非常に稀である。【症例】アデノイド・扁桃摘出以外に特記すべき既往のない,10歳女児。自己免疫疾患といった免疫不全などの家族歴もない。発熱,咽頭痛,頸部痛に引き続き,第8病日に呼吸不全,循環不全を来し,前医救急センター受診で心タンポナーデが判明,当院紹介となった。心嚢ドレナージを施行したところ,心嚢水は膿性で,前医開始のempiricな抗菌薬投与を継続した。のちに培養でA群溶連菌が検出され,抗菌薬はde-escalationしている。一方で,UCG,CTで上行大動脈に感染性仮性動脈瘤を疑う所見を認め拡大傾向にあるため,第11病日に緊急手術の適応と判断した。【手術】仮性大動脈瘤の破裂を危惧し,開胸前より人工心肺を装着する方針とした。成人の場合は鼠径をアクセスルートとすることが可能だが,小児の場合,血管径と下肢虚血の観点から困難であり,右頸部をcutdownして右頸動脈に人工血管を建てて送血路とした。これは,術中破裂だけでなく,弓部再建となった場合の脳灌流にも対応でき非常に有用である。幸いにも破裂することはなく上行大動脈人工血管置換術を施行しえた。【術後経過】術翌日の第12病日からNPWTを装着し,第15病日人工呼吸器離脱,第18病日に閉胸した。第24病日に集中治療室を退室し,6週間の抗生剤治療ののち第50病日に退院となった。【考察】感染性仮性動脈瘤に対する治療コンセンサスは存在せず,破裂のリスク,感染のコントロール,手術のリスクを総合的に判断して方針を決定するしかない。本症例では,瘤が拡大傾向にあるため,感染が完全には制御できているとはいえない状況で手術を行わざるをえなかったが,NPWTも併用し救命しえた。手術も送血路を工夫することで安全に施行することができた。