第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

体外循環・心筋保護

デジタルオーラル(II)89(P89)
体外循環・心筋保護

指定討論者:小泉 淳一(岩手医科大学 心臓血管外科)

[P89-2] LVAD装着により心室中隔内血腫を来した2例

小森 元貴1, 坂口 平馬2, 帆足 孝也1, 島田 勝利1, 今井 健太1, 海老島 宏典1, 黒嵜 健一2, 市川 肇1 (1.国立循環器病研究センター 小児心臓血管外科, 2.国立循環器病研究センター 小児循環器内科)

キーワード:LVAD, 心室中隔瘤, BiVAD

【症例1】月齢5、男児、体重3.5 kg。(診断) 拡張型心筋症 (DCM)。(現病歴)胎児期から低左心機能を指摘され、出生直後よりカテコラミンに依存していた。心臓カテーテル検査時に循環不全に陥り、緊急LVAD装着となった。(経過) 左室心尖脱血によるEXCOR® pediatric装着術中、人工心肺離脱時に経食道心エコー検査で25×20 mm大の心室中隔内血腫を確認。心尖の脱血管を一旦抜去し心尖部孔を補強の上で再度脱血管を縫着した。その後も血腫の退縮は得られず、圧排による著明な右室内腔狭小化にて人工心肺離脱は困難、RVAD装着。術後の冠動脈造影では中隔枝を含め、明らかな異常を認めず。術後17日目に心尖部中隔切開による血腫除去施行も右室内腔の拡大は乏しく、右室機能は改善せずRVAD補助を継続し心移植待機。1年3ヶ月間のBiVAD補助後、敗血症性ショックで死亡。病理解剖は承諾得られず。【症例2】 月齢18、女児、体重10.9 kg。(診断)DCM。(現病歴)出生後よりDCMを指摘され他院で外来通院中、感冒を契機に循環不全に陥りperipheral ECMO装着後2日目に当院搬送、同日左室心尖脱血によるEXCOR® pediatric装着。(経過)術後急性期は経過良好も、心嚢液貯留に伴うLVAD suckingが頻繁となり術後10日目に心嚢ドレナージ施行。術後12日目、経胸壁心エコーで24×16 mm大の心室中隔内血腫を確認。圧排による左室内腔の狭小化を認めたがLVAD脱血不良等認めず血行動態は不変。ワーファリン・ジピリダモール中止、未分化ヘパリン開始し、LVADのpump rateを100から85bpmへ下げ保存的に経過観察。血腫は術後30日目から退縮を始め、術後60日で消失。術後80日の現在、安定した状態で心移植待機中。【まとめ】発生時期及び経過の異なる2例のLVAD左室心尖脱血に起因する心室中隔内血腫を経験した。発生機序は不明で報告例はなく、装着手技を再考中である。