[OR14-4] 小児甲状腺機能亢進症における補正QT時間の分析
キーワード:補正QT時間, 甲状腺機能亢進症, 甲状腺ホルモン
【背景】甲状腺機能亢進症は心機能と心電図に大きな影響を及ぼす。臨床的に心筋再分極時間に対する甲状腺ホルモンの影響については、未だ議論が続いている。成人では補正QT間隔(QTc)によって測定された心室再分極に対する甲状腺ホルモンの影響を調べた研究を散見するが、一定の見解がない。【目的】甲状腺機能亢進症患児において、加療前の12誘導心電図から算出されたQTc(II, V4, V5, V6)と甲状腺ホルモン(TSH, FT3, FT4)の関係を調べる。【対象と方法】2015年1月~2020年12月までの5年間に、藤田医科大学病院と関連3施設の小児科で治療を開始した甲状腺機能亢進症症例を後方視的に調査した。13名の甲状腺機能亢進症児(男:女=2:11、年齢中央値11歳)、コントロールは年齢性別を合致させた26名の健常児童を用いて検討した。初診時の12誘導心電図からII, V4, V5, V6のQT時間を接線法で計測し、Fridericiaの補正式を用いてQTcを算出した。血液生化学検査結果からはTSH、FT3、FT4および血清電解質の値をQTcとの相関性の検定に用いた。【結果】患児の平均QTc(V5)は377±31msec、健常児童は373±28msecと有意差は認めなかった。TSHとQTc、FT3とQTcには有意な相関を認めず、一方のFT4とQTc(II, V5, V6、各p値は0.012, 0.015, 0.019)に有意な負の相関が観察された。血清K +とQTcは有意な関係を示さなかった。【考案】今回の検討では、成人で観察されるFT4による心筋再分極時間の延長を認めなかった。この所見が小児期特有の病態につながるのか、発達生理学的にまたは臨床的に重要情報であるかどうかは、さらなる研究によって調査する必要がある。