[OR40-3] 移行期・成人期にある先天性心疾患患者の疾患に関する知識とその関連要因
キーワード:先天性心疾患, 移行医療, 疾患知識
【背景・目的】移行医療では疾患理解を基本とする自立のための患者教育が重要とされる。しかし国内では患者の疾患に関する知識を客観的に評価した研究はない。本研究では移行期・成人期の先天性心疾患患者の疾患に関する知識を調査し、関連要因を検討する。【方法】対象はA病院の小児科外来と成人先天性心疾患外来に通院する16歳以上の患者とした。知識の評価には国際的に広く使用されているLeuven Knowledge Questionnaire for Congenital Heart Disease(LKQCHD)の日本語版を用いた。正答数を質問項目数で除した数に100を乗じ全体のスコアとドメイン毎のスコアを算出した。関連要因探索では全体のスコアを従属変数、先行研究より選定した移行医療に関連する要因を独立変数とした重回帰分析を行った。【結果】対象者58名(男性30名、女性28名、年齢中央値22歳)のLKQCHD全体のスコア平均は53.7±15.4であり、ドメイン毎のスコア平均は、病気と治療68.3±19.7、合併症の予防45.8±19.0、身体活動74.1±34.1、性と遺伝37.9±35.4、避妊と妊娠40.2±29.1であった。重回帰分析では疾患重症度が中等症(β=-0.46)、重症(β=-0.56)であると軽症者に比べスコアが有意に低く、外来診察時に医師と話す人が本人である(β=0.26)、両親から疾患名を聞いたことがある(β=0.26)対象者で、スコアが有意に高かった。一方、通院先の診療科と、医師から疾患名を聞いた経験はスコアに有意な影響を与えていなかった。【考察・結論】患者は病名や行われてきた治療、活動制限に関する知識はあるが、今後予想される合併症や予防方法、遺伝や妊娠出産に関する知識は低い傾向にあった。移行期のみではなく、生涯を見据えた疾患教育の必要性が示唆された。また、関連要因探索では、疾患重症度が高い者への支援、患者本人が主体的に診察を受けられる支援が必要であり、幼少期から疾患理解が進められるよう両親に対する働きかけも重要と考えられた。