第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

多領域

デジタルオーラルI(OR41)
多領域 2

指定討論者:仁尾 かおり(三重大学大学院医学系研究科)
指定討論者:西宮 園美(国立循環器病研究センター 看護部)

[OR41-2] 移行期支援における思春期患者の家族への介入に関する一考察

笹川 みちる (国立循環器病研究センター 看護部)

キーワード:移行期支援, 思春期, 家族

【緒言】移行期支援の必要性が高まっているが、支援における家族への介入の報告は少ない。今回、思春期患者と家族への移行期支援看護外来での関わりを振り返り、家族への介入方法に示唆を得たため報告する。発表に関し、本人・家族の同意を得た。
【事例】19歳男性。房室中隔欠損症、心内修復術後、大動脈弁下狭窄。ACE阻害薬内服中。診察室の椅子に座って回り続けるなど年齢より幼い行動はあったが、通信制高校を経て大学進学。
【介入の実際】移行期支援看護外来では15歳より介入。移行期支援について説明すると母は「そういうことを待っていた」と涙ぐんだ。診察室では母が医師の側で熱心にノートを取っていたため、本人が座る位置を医師に近づけることを提案。その後は本人と医師の会話が増え、母は「先生の質問に私が率先して答えてしまっていた」と気づかれた。母が「自分が診察中に書き溜めてきたノートを渡したい」と希望された際には、ノートは本人が準備し、診察前に医師への質問を考えることを母から本人へ促すことから始めるよう提案。その後の本人の状況から、診察前の内服薬の残薬確認や次回外来の日程検討を追加していくように母に促した。大学入学時には本人単独での受診も可能となり、母は「息子が私と同じようにできないといけないと思っていたけど、今はこれでいいとわかって安心した」と話された。
【考察】生命に直結する疾患管理が求められていた先天性心疾患患者の家族は、わが子の成長を実感したとしても、それを移譲することに躊躇する可能性がある。医療者は病状や発達段階を見極め、適切なタイミングで移行期支援が開始できるよう家族を後押しする必要がある。また、これまで家族が行ってきた方法や親としての役割を移譲するのではなく、子ども自身がセルフケア能力を獲得するための方法を家族とともに検討し、移行期支援における家族の役割を実感できるように介入することが重要と考える。