[OR6-1] 重症Ebstein病における中心肺動脈の発育と左室容積~PAIVSとの比較~
キーワード:Ebstein, PAIVS, Fontan
【背景】新生児期にStarnes手術を要する重症Ebstein病では、段階的な右心バイパス術の完成に向けて管理していく中で、中心肺動脈の発育不良や左室拡大が問題となることがあるが、その詳細は不明である。【目的】重症Ebstein病における中心肺動脈の発育及び左室容積について特徴と経時的変化を明らかにすること。【方法】当院において、2010年12月から2019年12月までに新生児期にStarnes手術を施行した重症Ebstein病の13例(E群)と、同時期に出生し、当院にて姑息手術を施行した純型肺動脈閉鎖(PAIVS)46例(PA群)を対象とした。体肺動脈シャント術後(S術後)、グレン手術後(G術後)、フォンタン手術後(F術後)の各段階ごとのカテーテル検査データ(年齢、体重、肺動脈圧、PA index(PAI)、肺血流量、体血流量、肺体血流比、肺血管抵抗(RpI)、左室拡張末期容積(LVEDV)、血漿BNP値)を調査し、比較検討した。【結果】2020年12月までのF術到達例(E群:PA群、以下略)は7例:25例、死亡例は1例:6例であった。S術後のPAIは195:310mm2/m2(p<0.01)、G術後のPAIは190:272mm2/m2(p<0.01)、F術後のPAIは182:273mm2/m2(p<0.01) とE群で有意に低値であった。F術後のLVEDVは146:104% of normal (p=0.03)とE群で有意に大きかった。各手術段階において、肺血流量や体肺血流比に有意差はなかった。【考察】重症Ebstein病は、同じ左室型単心室症のPAIVSと比較し、右心バイパスの各手術段階において中心肺動脈の発育が不良であった。またF術後に左室拡大が残存した。肺血流量等の血行動態指標に有意差はなく、これらは、Ebstein病固有の解剖学的特性に基づく特徴の可能性がある。これらの所見の長期遠隔期での変化および影響について、今後も検討が必要である。