[P28-5] 心不全診断のpitfall ~mid-aortic syndromeの1例~
キーワード:mid aortic syndrome, 高血圧性心筋症, 腎不全
【前文】心原生ショックで発症したmid-aortic syndrome乳児例を経験したが、診断には1カ月強の時間を要した。早期に診断できなかった点を反省し、文献的考察を提示する。【症例】生来健康な3か月女児【現病歴】X-2日に予防接種を行い、X-1日から哺乳不良、活気低下を認めた。X日顔色不良、呻吟が出現し前医を受診した。心臓超音波で著明な心収縮力低下を認めた。観察中に心停止し心肺蘇生された。心拍再開の後、当院に搬送となりVA-ECMOを導入された。心機能は改善し第3病日ECMO離脱されたが無尿が続き血液透析を継続した。心駆出率の改善が不十分であるにも関わらず収縮期血圧100-110 mmHgと上昇したため第7病日で強心薬を終了し降圧薬を開始された。第34病日から管理に難渋する高血圧が顕在化し、第37病日に激しい啼泣の後に心停止になり心肺蘇生で心拍再開した。心筋生検では心筋炎や心筋症を疑う所見は認めず代謝異常検査も正常であった。高血圧の原因検索で、血清アルドステロン値が2,760 pg/ml(基準値 240 pg/ml以下)と異常高値を認め、腹部造影CTでmid-aortic syndromeの診断に至った。【考察】mid-aortic syndromeは上腸間膜動脈分岐部以下の腹部大動脈に狭窄を来し腎血管性高血圧の原因となる稀な疾患である。乳児期に発症した場合には重症化しやすく診断が遅れると予後不良である。本症例では当初、何らかの背景を有する心筋疾患による心原性ショックと二次性の腎不全という病態を想起していたが、実際の病態は腎性高血圧による二次性の心不全であった。自覚症状を表出できない乳児であったため、初発症状が心原性ショックであった。初診時の血圧が低く(たとえショックでも)、大動脈弁から下行大動脈にかけてのエコースクリーニングで陽性所見がなくとも、過大な後負荷による心不全の鑑別は常に心に留め置く必要がある。