[P28-4] Everolimus投与すべきか判断に苦慮した結節性硬化症に合併する新生児巨大心横紋筋腫の一例
Keywords:Everolimus, 心横紋筋腫, 不整脈
【背景】血行動態異常や不整脈を生じる結節性硬化症(TSC)に伴う心横紋筋腫に対して,mTOR阻害剤であるEverolimus(EL)が2019年8月より適応拡大され,その有効性を示す報告も近年増加している.一方でまだエビデンスのあるガイドラインはなく,実臨床では投与の判断に苦慮する事も多いと思われる.【症例】症例は生後7ヶ月男児.妊娠32週の胎児超音波検査で多発性心臓腫瘍を指摘された.在胎38週2日,体重2980gで出生.出生後の心臓超音波検査で左室心尖部,左室心基部自由壁側,左房後壁側,右室心尖部にそれぞれ径12-15mm程度の腫瘍を認めた.また後日施行した脳MRI検査で多発する上衣下結節を認め,TSCに伴う心横紋筋腫と診断した.出生時のエコーでは心収縮は良好で明らかな流入・流出障害パターンは呈しておらず,循環障害は来していないと判断した.心電図では右脚ブロックを認め,一部delta波も見られていた.日齢10に施行したホルター心電図でSVTを認め,血液検査でトロポニンI (TropI)346ng/L,BNP335.2mg/dLと上昇を認めた.この時点でEL投与の是非について科内で検討を行ったが,当施設での使用経験がなかった事などから,まずは薬物療法を開始して経過を見る方針とし,プロプラノロール内服を開始した.日齢24で再検したホルター心電図検査ではSVT認めずPAC,PVC頻度も減少を認めた.また血液検査でもTropI,BNP値とも低下しており,臨床的にも心不全徴候は見られず,全身状態は良好であった事から,生後1ヶ月で退院とした.現在,生後7ヶ月に至るまで外来経過観察中であるが,循環動態の悪化はなく経過している.不整脈についてSVTは再燃ないが,PACが一定の頻度で見られている事もありプロプラノール内服は継続している.【考察】本症例はEL投与をせず経過を見たが,不整脈出現しTropI,BNP上昇が見られた時点でEL投与すべきであった可能性もある.本症例の治療経過,EL投与の是非について後方視的に検討する.