[P29-5] 移植後リンパ増殖性疾患の早期鑑別における血中EBウイルスDNA検索の意義
キーワード:心臓移植, PTLD, EBウイルス
【背景】移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は特に早期発症例においてEBウイルス(EBV)感染が強く関与している。小児では移植前の未感染例が多く、EBV感染の観察が重要である。PTLDは伝染性単核球症様からB細胞性リンパ腫まで重症度が多彩であり、初期鑑別が重要となる。また発症背景にはEBV血症があり、その検索が必要とされる。今回、我々が経験したEBV関連PTLD2症例から、移植後EBV感染のスクリーニングについて考察した。【症例】<症例1>1歳10か月時に心臓移植を行い、術後97日目に発熱および感冒症状を発症した。術後123日目にEBV‐DNA血症が判明し、その後施行したPET-CTにて右頸部リンパ節への集積を認め、同部位の生検にてびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)と診断され、化学療法が施行された。本症例は術後135日目の時点で、VCA抗体はIgM・IgGとも陰性であった。<症例2>17歳時に心臓移植を行い、術後165日目に発熱、咽頭痛を発症した。発症時はVCA抗体がIgM・IgGとも陰性で、血中EBV-DNAも検出感度以下であった。術後189日目の扁桃生検では伝染性単核球症と診断(EBER-ISH, EBNA陽性)され、EBV感染が示唆されたが血中EBV‐DNAは陰性で、PTLDへの進展は否定的であった。その後も扁桃炎症状が反復し、術後242日目に血中EBV‐DNA値は2.2×102コピーとcut off値(2.0×10)を上回ったが、IgM, IgG, EBNAは陰性であった。術後283日目に血中EBV‐DNAコピーは9.9×10と陽性が持続し、翌日行った頸部リンパ節生検にてDLBCLと診断され、化学療法が施行された。【考察】移植後の免疫抑制療法はT細胞機能低下などによりEBV血症例においてもEBV抗体の陽転化を妨げるという報告がある。また、特に血中ウイルスDNA量が多い場合はPTLDへの進展が多いとされDNA量の測定も重要である。今回の2症例では抗体検査がEBV感染の早期発見には有用でなく、症状とともに定期的な血中EBV-DNA検査による観察の必要性が示唆された。