[P3-3] 新生児期に顕在化した単純型大動脈縮窄の一例
キーワード:単純型大動脈縮窄, 新生児発症, 大動脈峡部正常化
単純型大動脈縮窄(sCoA)が新生児期に発症することは稀である。当科では、心雑音の精査入院時にすでにショック状態で緊急手術となったsCoA症例を経験し、新生児発症のsCoAにも注意する必要があると認識していた。今回、心雑音を契機にsCoAを疑い、大動脈峡部(isthmus)を綿密に経過観察することにより、循環動態が保たれた状態で高次病院に搬送できた症例を経験した。症例は在胎41週0日、体重3018 gで出生した女児。周産期に問題なく、新生児室で管理。日齢2に心雑音を認め、エコーでisthmusが2.73 mmであり形態的にsCoAと判断した。当科では暫定的にisthmusが体重(kg)mm以下を異常値としている。大動脈弁は二尖弁であったが大動脈弁狭窄および大動脈閉鎖不全は有意でなく、また僧帽弁も器質的異常を伴わず、生理的な左室容量増大に伴いisthmusの通過血流が増え正常化することが期待されたが、新生児発症のsCoAを懸念しNICU入院とした。入院後はisthmusの通過血流を増やすため水分率100 ml/kg/dayと多めで管理を開始した。尿量や血圧は異常なく、乳酸値やBNPも改善傾向で経過した。しかし日齢4に動脈管閉鎖を確認後、isthmusは2.45 mmとやや狭小化し最大流速も上昇したため、水分率を上げisthmusの拡大を図った。日齢6には一旦isthmusは2.95 mmまで改善したが、その後狭小化に転じ、日齢9に2.09 mmとなった。機序としては迷入動脈管組織の収縮に伴うものと推定された。このとき通過血流は連続性となり前方へ吹き出し、20 mmHgの上下肢血圧差も認めたことから、高次病院へ搬送し待機的に手術の方針となった。新生児発症のsCoAは症状が捉えにくく、診断された時には重症化していることが多い。疑った場合には注意深い経過観察が必要である。