[P30-1] 先天性心疾患においてナトリウム利尿ペプチドは何を表しているか
Keywords:ナトリウム利尿ペプチド, 先天性心疾患, 心不全
【背景】BNP、NT-pro BNP、HANPはいずれも心不全マーカーとして知られているが、複数のナトリウム利尿ペプチド(NP)のそれぞれの臨床的意義は明らかでない。それぞれの代謝経路と分泌経路が異なることから、その意義は一律ではないはずである。【対象と方法】心臓カテーテル検査入院時にBNP、NT-pro BNP、HANPを同時に測定した非フォンタン連続225例の先天性心疾患において、症例をBNP100pg/ml以上(H群)と未満(L群)に分け、血行動態的心不全指標と3種類のNP指標の関連を解析した。【結果】H群は23例(10%)であった。H群ではBNP、NT-pro BNP、HANPはCVP (p<.01)と、HANPおよびBNPが拡張末期圧と正相関(p<.05)を認めたのに対し、L群では関連しなかった。また、H群ではどのNPも拡張末期容積と関連しなかったが、L群ではいずれのNPも左室・右室拡張末期容積、肺動脈圧と正相関を認めた。H群・L群関わらずHANPおよびNT-pro BNPはSVIと負相関、後負荷指標である動脈エラスタンス・キャパシタンスと正相関を認めた(p<.05)が、BNPは関連しなかった。H群では高肺血流疾患でBNPが高値を認めた(p<.05)のに対し、L群では高肺血流疾患でHANP、NT-pro BNPが高値を示した(p<.05)。H群ではBNPはeGFRと負相関を認め(p<.05)、特にNT-pro BNP/BNP比は極めて強い正相関を認めた(p<.0001, R2=0.70)。【結論】3つのNPはBNP 100ng/ml以上では静脈系うっ血と関連するのに対し、BNP100ng/ml未満では心室容量負荷と関連した。またBNPが低い範囲ではHANP、NT-pro BNPが、BNPが高い範囲ではBNPが高肺血流の指標となった。BNP高値の病態におけるNT-pro BNP/BNP比と腎機能の極めて強い関連は、NP受容体を介したBNP生理活性が飽和したためBNP、NT-pro BNPの両代謝が一元的な腎依存に変化する可能性を示唆し、NP生理活性における重要な情報を提供する可能性がある。