[P40-4] Fontan candidateに対する肺血管拡張剤の効果
キーワード:肺血管拡張剤, Fontan循環, 高肺血管抵抗
【背景】近年、肺血管拡張剤(PV)の肺高血圧・高肺血管抵抗や肺動脈低形成を有すハイリスクFontan candidateへの適応拡大が期待されている。しかし機能的単心室患者へのPVの効果は未だ明らかではない。【目的】Fontan手術を目指す機能的単心室患者におけるPVの効果を後方視的に検討する。【方法・対象】2008年1月から2020年12月までに当院で両方向性グレン手術を行った機能的単心室患者86例を対象とした。Fontan手術前にPVを導入した群(D群:17例)および非導入群(N群:69例)に分け、その臨床経過および各Stageにおける心臓カテーテル検査結果を後方視的に比較検討した。【結果】D群の1例データが欠損しており除外したため、D群16例、N群69例を解析した。群間に性別、出生体重、右心室系単心室率、初回姑息術等の患者背景に差を認めなかった。PVの導入のタイミングはGlenn術前が4例、Glenn術後が12例であった。PV導入の理由として肺高血圧・Rp高値が13例、肺動脈低形成3例であった。Glenn手術直後ではD群のRpは有意に高く、平均肺動脈圧も高い傾向にあった。D群患者の平均肺動脈圧およびRp値はPV投与前後で有意に低下(それぞれ18.2±6.7 vs 14.6±3.2 mmHg, p<0.001, 2.98±0.63 vs 1.79±0.55, p=0.034; paired t-test)し、PA indexは増加傾向を示した(214±87 vs 271±46, p=0.053; paired t-test)。その結果、Fontan手術術前では両群の平均肺動脈圧、Rp値およびPA indexには差を認めなかった。Glenn手術時年齢はD群がやや高い傾向を認め(390±232 vs 301±14, p=0.052)、さらにGlenn術後Fontan手術までの待機期間もD群で有意に長かったが(756±322 vs 508±132日, p<0.001)、Fontan達成率は両群に差がなく、術後を通してfailed Fontan例は両群ともに認めなかった。【結語】PVは単心室循環においても肺血管抵抗を下げ、高肺血管抵抗のFontan candidateに使用することで、Fontan達成率向上に寄与する可能性が示唆された。