[P41-1] 進行性骨化性線維異形成症に合併した肺高血圧症の1例
キーワード:肺高血圧症, 進行性骨化性線維異形成症, 肺血管拡張薬
[背景]進行性骨化性線維異形成症(FOP)は外傷や炎症により線維性組織が骨化する稀な遺伝性疾患である。肺高血圧症合併の報告あるが、加療経過の報告は少ない。[症例]2歳でFOPと診断された32歳女性。FOPによる拘束性換気障害に対して非侵襲的陽圧換気を導入されていた。2週間前より続く、労作と坐位から臥位への体位変換で悪化する呼吸苦と酸素化不良を主訴に受診した。呼吸苦は安静時でBorgスケール 20、SpO2は室内気で70%台後半であった。BNPは480pg/mLと高値で、心臓超音波検査では右心系の拡大、左室短軸像で心室中隔平坦化、右室左室推定圧較差(TRPG) 82mmHgが指摘された。またコントラストエコーでは卵円孔開存症を介した右左短絡が描出され、臥位により悪化した。これらから肺高血圧症が疑われた。心臓カテーテル検査はFOP患者ではFlare-upを誘発し、骨化を進行させるため禁忌である。そのため、検体検査、心臓CT、肺血流換気シンチグラフィにより可及的に鑑別と肺血管拡張薬禁忌疾患の除外を行い、酸素療法、タダラフィル、マシテンタン、利尿薬を導入した。数日後より呼吸苦は改善(Borgスケール 11)し、SpO2は90%台後半~100%へ上昇した。TRPG、BNPは一旦、低下傾向となったが、その後、上昇に転じ、胸水貯留も指摘された。SpO2低下は伴わず、左室前負荷増加による左房圧上昇と考え、利尿薬増量で対応、以降TRPG、BNPともに低下した。[考察]FOPに伴う肺高血圧症の機序として胸郭不全症候群と原因遺伝子ACVR1の変異による肺動脈性肺高血圧症が想定されている。心臓カテーテル検査は禁忌であるが非侵襲的検査により評価した上で肺高血圧治療を導入し、臨床症状の改善を得ることができた。[結語]FOPに伴う肺高血圧症に対してタダラフィル、マシテンタンの併用が有効であった。