第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

学校保健・疫学・心血管危険因子

デジタルオーラルII(P47)
学校保健・疫学・心血管危険因子

指定討論者:大野 拓郎(大分県立病院)
指定討論者:佐藤 智幸(自治医科大学とちぎ子ども医療センター)

[P47-2] 成人期以降に問題となる心房中隔欠損の発見に学校心臓検診は有効か?

岡川 浩人 (JCHO滋賀病院 小児科)

キーワード:学校心臓検診, 心電図, 心房中隔欠損

[はじめに]脳卒中・循環器病対策基本法の基本計画において小児期に発見される慢性疾患の成人期への移行が取り上げられ、学校心臓検診の役割が明記された。学校心臓検診心電図検診は学校心臓検診において重要な位置を占めており、先天性心疾患や致死性不整脈の発見に大きな役割を果たすとされる。心房中隔欠損(ASD)は小児期に無症状で経過し成人期以降に問題となる場合が多い。実際、成人期に診断される先天性心疾患としてASDは最多で、心不全・心房細動・肺高血圧などで発見された場合にはASD閉鎖で根治を望めない症例もある。今回、学校心臓検診のASD発見における有効性について検討したので報告する。[方法]公表されている11都県・市・団体の学校心臓検診結果報告の162万4418人を元に、精検抽出率、ASD有病率、ASD新規発見率、精検症例におけるASD新規発見率について検討した。また、2016-2019年度大津市学校心臓検診におけるASD発見精度についても検討した(小学生24764人、中学生11760人)。[結果]ASD有病率は平均0.114%、ASD新規発見率は平均0.014%、精検症例におけるASD新規発見率は平均0.53%で、閉鎖術を要する割合はそのうち1/2~1/5であった。大津市学校心臓検診におけるASD新規発見率は、小学生0.01%、中学生0.01%、精研症例におけるASD新規発見率は小学生0.19%、中学生0.13%、心電図異常症例におけるASD新規発見率は小学生1.60%、中学生1.72%であった。治療対象となったASDは中学生1人のみであった。[考察]学校心臓検診、特に心電図検診によりASDを発見し閉鎖術に至ったとする症例報告は多い。しかしながら、ASD発見頻度の低さ、病的重症度の低さを考えると、費用対効果の面からも学校心臓検診におけるASD発見には再考の余地があると思われる。