第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

染色体異常・遺伝子異常

デジタルオーラルII(P5)
染色体異常・遺伝子異常 2

指定討論者:上砂 光裕(日本医科大学多摩永山病院小児科)
指定討論者:内田 敬子(慶應義塾大学)

[P5-5] 新規FBN1遺伝子変異を認め、生後早期に死亡した早期発症型マルファン症候群

北川 陽介, 佐々木 都寛, 嶋田 淳, 大谷 勝記, 高橋 徹 (弘前大学 医学部附属病院 小児科)

キーワード:早期発症型マルファン症候群, 新生児マルファン症候群, FBN1

【緒言】早期発症型マルファン症候群(early onset Marfan syndrome : eoMFS)は、思春期以降に症状が顕在化する一般的なマルファン症候群(classical MFS:cMFS)と異なり、新生児期から乳幼児期に重篤な心肺機能不全を発症する予後不良な疾患である。稀な疾患で、以前は主に臨床症状による診断が行われていたが、最近の検査技術の進歩により遺伝子診断が行われるようになってきている。今回、新規の遺伝子変異が原因と考えられるeoMFSの症例を経験した。【症例】日齢0、女児。MFSの家族歴なし。在胎37週、NRFSと心拡大のため前医から母体搬送され、同日緊急帝王切開にて出生した。出生体重 2,383g、Apgar 1/5。老人様顔貌、細長い四肢、蜘蛛状指、多発性関節拘縮などのeoMFSに特徴的な外観を呈していた。CTR 89 %と著明な心拡大があり、心エコーにて、四腔の著明な拡大と両心室の収縮力低下、三尖弁および僧帽弁の逸脱と中等度の弁逆流、加えて肺動脈弁と大動脈弁にも中等度の弁逆流を認めた。肺病変の有無は明らかではなかった。出生後より人工呼吸管理とし、カテコラミンやNO投与を含めた集中治療を行ったが、生後13時間で死亡した。臨床症状からeoMFSが疑われ、次世代シーケンサーによる遺伝子解析によってFBN1に変異を認めた。【結語】eoMFSは予後不良な疾患であり、平均生存期間は約16ヵ月と報告されている。本症例は極めて重篤な状態で出生し、生後早期に死亡した。eoMFSの責任遺伝子はFBN1でありcMFSと同様であるが、特にexon 24-32の変異例が多く、eoMFSとcMFSとの臨床症状の差異の一因と考えられている。本症例においてもexon 26 に新規の変異(c.3218 A>G)が認められた。長期生存例の報告もあり、臨床症状にはある程度の幅を認めている。eoMFSにおける遺伝子変異の部位や形式と臨床症状との関連は明らかにされておらず、さらなる症例の蓄積が必要である。