[II-OR22-01] 上心臓型部分肺静脈還流異常を合併した機能的単心室の臨床像
キーワード:機能的単心室, 部分肺静脈還流異常, Fontan手術
【背景】機能的単心室に上心臓型部分肺静脈還流異常(PAPVC)を合併した場合、解剖学的に修復困難な場合にはPAPVC未修復のまま両方向性Glenn手術(BDG)を行う必要がある。BDG術後の圧関係の変化によりPAPVCの血流方向が逆転して上大静脈側から肺静脈側に流入する側副血管(V-PV)となり、循環動態に悪影響を与える場合がある。この疾患群の臨床像および予後の報告はない。【対象・方法】当院で2005年以降にPAPVC未修復のままBDGを行なった8例中、急性期死亡1例を除いた7例の診療録を後方視的に検討した。【結果】全7例ともBDG術後にPAPVCの血流方向が逆転してV-PVとなったことをカテーテル検査で確認した。症例①-④ではV-PVを閉鎖してFontan(F)術に到達した。症例①-③はF術と同時にV-PVを結紮し、症例④はF術前にV-PVをcoil塞栓した。F術後中央値5年のカテーテル検査で中心静脈圧は(7-11)mmHgと上昇は無かったが、元のPAPVC領域ではいずれも順行性肺血流に乏しく体肺動脈側副血行路が発達していた。症例⑤-⑦はBDG循環不全に陥りF術未到達である。BDG循環不全の主因は、症例⑤:肺血管床の著明な左右差とV-PVの経時的な発達によるBDG血流障害、症例⑥:方針決定待機中のV-PVの経時的な発達によるBDG血流障害、症例⑦:BDG急性期の左肺動脈閉塞とそれに伴う体肺動脈側副血管発達。症例⑤⑥ではV-PV発達がBDG循環悪化に寄与したと考えられた。【考察】V-PVを閉鎖してFontan到達した例がある一方、V-PV発達も相まってBDG循環不全に陥る例もあった。BDG術後の圧関係からは経時的にV-PVが発達すると考えられ、遅滞なくV-PVの閉鎖適応とそのタイミングを検討する必要がある。また、Fontan到達例でも元のPAPVC領域の肺循環は良好でない可能性があり、更に長期の経過観察を要する。